窓廻りの透湿・防水シートの施工は、品確法の10年瑕疵保証問題と関連して住宅保証機構でも施工図を標準仕様として示しています。
スリーブ管は必ずパイプ受けを柱などに取り付けたうえで設置しますが、このとき水勾配を30分の1確保します。 |
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耐震性アップのため、外壁面は構造用合板張りにして筋交いをできるだけ減らしてあるので、グラスウールの施工は以前と比べればかなりやりやすくなっています。それでもロール品は幅方向をカットする必要があるなど、作業が面倒です。面倒な作業はいい加減な作業につながりやすいものです。 そこで第一のポイントは、グラスウールの施工はプレカット品を使うことです。北海道では当たり前のようになってきましたが、本州では必ずしも普及しているとはいえません。断熱欠損をなくすにはプレカット品が必須です。 サイズは様々ありますが、たとえば在来木造の柱と間柱の間に充てんするサイズは幅が395ミリ、長さが2740ミリ。ツーバイフォーで標準的なスタッド間充てんタイプは幅が425ミリ、長さが2350ミリ。 次にグラスウールの密度です。北海道では高性能16Kと24Kが使われています。断熱性能はほぼ同じですが、高性能16Kを薦めます。24Kは密度が高いため反発力が強く、筋交いなどのまわりで丁寧な施工をしない限り壁がふくらむなどの障害が発生するからです。
壁・筋交い部を切り込む では壁の断熱施工に進みます。プレカット品のグラスウールを柱―間柱の間などに壁上部から入れていきます。柱―間柱の幅よりやや大きくプレカットされているので、隙間が空く心配はありません。柱などとの境目を指先できゅっと押して納めると、その部分がへこんでしまいますが、あまり神経質になる必要はありません。ただし、グラスウールを施工した状態で現場見学会をやるときは、当然ですがきれいに施工します。押し込んでへこんだ柱の境目は、定規などでグラスウールを手前に引っ張るときれいになります。 壁の施工で注意しなければならないのは、やはり筋交いのある部分などです。特に2ッ割の筋交い部はグラスウールが押されて山なりにへこみます。これをそのままにすると気流が流れて断熱性能を低下させる可能性があります。筋交いに沿ってグラスウールを切り込み、へこみをなくします。高性能16Kはさほど反発力が強くないので、切り込んだあとで筋交い部を切り取ることまでする必要はありません。切り込みを入れて少し引き出してやれば、筋交いのまわりが自然ときれいに納まります。 同じく内装下地受けとして入れる胴縁部も切り込んでやるときれいに納まります。
次に床の施工です。在来木造の床断熱は床梁(大引)と根太を直交させてその間に50+100ミリの合計150ミリか100+100ミリの合計200ミリを充てんすべきです。これは熱橋を避けることと、床の断熱強化のためです。 またツーバイフォーの場合はブローイングで根太の厚さいっぱいに吹き込む方法がもっとも一般的です。これは北海道では床根太に210材という梁背が235ミリもある材料を使い、その間にめいっぱい吹いて断熱性能を上げるために始まった工法ですが、206材や208材の時もこの方法がいいと思います。ツーバイフォー床用のプレカットサイズがないからです。 床断熱の注意点は、何と言っても断熱材の垂れ下がり防止です。断熱材と床下地材の間に隙間ができると、そこに気流が走って断熱性能を低下させます。これを防ぐため、断熱材の支持はネットなどではなく、剛性を確保できる板材などで支えます。
壁、床ときて最後に天井の断熱施工です。 天井の断熱はブローイング工法で決まり。マット品のグラスウールを小屋裏に丁寧に敷き込むことは不可能だと考えてください。天井断熱の断熱欠損はスガモリなどの大きな被害に直結しやすいので、絶対に避けなければなりません。 ブローイング工法で施工する場合に注意する点は、小屋裏の構造をブローイング業者が隙間なく断熱施工できるようにしておくこと、具体的には軒先、スノーダクトのトイ下などで十分な高さがとれていることです。 まず軒先です。ただでさえ狭い小屋裏で、軒先は特に狭くなりがち。断熱材を十分に吹き込み、さらに軒先から小屋裏への通気が確保できるよう、小屋裏の高さを確保するとともに軒先へのブローイングの崩れ防止、通気確保がポイントになります。これはツーバイフォーの勾配屋根の場合に特に重要です。 軒先の崩れ防止と通気確保には、段ボール状のせき板を設置します。軒天からの強風でブローイングが飛び散らないように、さらに保温もかねてグラスウールボードなどでせき板を作っている工務店もあります。 ここらへんのディテールは地味な部分ですが、手抜きをせずに完璧に行うことをおすすめします。それはスガモリなどの深刻な被害につながるケースが多いからです。 最後に、床断熱と天井断熱の場合は点検口を必ず断熱・気密タイプのものにします。 以前は現場制作するしかなかったのですが、今は既製品があるので、これを使うといいでしょう。現場制作する場合は、暖房空間となる室内側でパッキン材を回し気密・防湿を確保、その外側に断熱します。安全のため気密・防湿層を二重にしたり、気密・防湿層の位置を間違えると、点検口で結露しますので注意してください。『防湿は高温側(室内側)で』の原則を忘れずに。 |
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一般的に防湿・気密施工といいますが、防湿と気密はそれぞれ違うことを、まずは頭に入れておいてください。ポリエチレンシートで床・壁・天井を防湿・気密施工するときは、防湿も気密もポリエチレンシートで一緒に行うので問題ないのですが、そうでない場合もあるのです。たとえば合板気密工法は室内側で防湿しますが、気密層は外壁下地合板です。このことについてはあとで説明します。 では、断熱施工を終えた床・壁・天井に張る防湿・気密シートについて説明します。大切なのは3点。まず、0・2ミリ厚の製品を使うこと、次に幅2m以上の幅広製品をできれば横張りで使うこと、最後にシート材は劣化防止の添加剤入りの高品質製品を使うこと。 1点目のシートの厚さです。これは気密性を確保する上でとても大切です。一般的な0.1ミリ厚は、シートを重ね合わせたときに下地にちょっとでも不陸があると気密性が確保できないほか、釘やタッカーで引っかけたときの引き裂き強度が大きく劣ります。
3点目の添加剤については、製品をみただけではわかりません。しかし、これはとても重要なポイントなのです。スウェーデンでパネルヒータの背面の防湿・気密シートがボロボロになるという被害が実際にあったからです。 ポリエチレンシートが劣化すると、気密性能の低下を招くだけでなく、防湿性も低下して壁内に湿気が流れ込み、その結果、木材の結露や腐れの心配が出てきます。しかもこれらは気づかないうちに進行するのです。 ツーバイフォーとは異なり、在来木造は胴差しまわりや下屋付近など、防湿・気密シートだけで気密・防湿性を確保している部分があります。ここで劣化を起こすとたいへんなことになるのです。防湿・気密シートは必ず上からボード類で押さえる必要がありますし、熱やアルカリに強い添加剤入りの高品質シートを使ってください。
では床の施工から始めます。床の施工で大切なのは、間仕切壁を立てる前に断熱・気密施工を行うということです。思い出してください。在来木造は間仕切壁の内部を冷気が走って寒いのです。これを止めるには、壁を作る前に断熱・気密施工を行い、その上から壁を立てる方法に工程を変えなければいけません。間仕切壁をあとやりにしても、柱は残っているので柱まわりはシートを貼ってからテープ処理します。 床は防湿・気密シートを張る方法と下地合板を気密層代わりにする方法があります。防湿シートを使ってもいいのですが、これから断熱・気密住宅を手がける場合は、床下地合板を気密層として利用し、防湿・気密シートを使わない方法を推奨します。 合板で気密層を作る場合は、継ぎ目のテープ止めや間仕切壁となる部分をしっかり施工します。合板は多少なりとも透湿性があるので、湿気が侵入して心配だという方もいますが、過去の施工例からいって、防湿・気密シートがないために床組みが腐った例はありません。 それより心配なのは、防湿・気密シートを使ったときの事故です。 1.クッションフロアなど透湿性のない床仕上げ材の上で水をこぼしたとき、床下地合板はクッションフロアと防湿・気密シートに挟まれてこぼれた水によって腐る心配があります。2.和室でたたみ仕上げをした場合、畳の断熱性で畳下の温度が下がり、合板にカビなどが発生する心配があります。 透湿性をなくすより、ある程度の透湿性があったほうが安全なのが床部分といえます。室内からの湿気移動も気密性が確保されている限り、心配ありません。ただし、床下の地盤防湿はしっかり行い、床組木材の腐れを防いでください。 壁・横張り一発ぐるりと 外壁の防湿・気密施工は、床まわりと胴差しまわりの先張りシートの間をできれば横張りで一気に施工すべきです。写真のようにロールシートを壁面に沿って転がしながらシートを引き出します。開口部も気にせず一気に張り巡らし、あとから開口部を切り開きます。幅は2.4mが標準となります。 床まわり、胴差しまわりの先張りシートとの連続性は、上から内装下地ボードで押さえることで確保するので、下地のあるところでしっかり100ミリ以上の重ねをとります。 2階は壁のシートが床から桁まで届くように張るのが合理的です。こうしておけば天井レベルと桁の間の断熱層から小屋裏へ抜ける気流を防ぐ気流止めを兼ねることができるからです。ただし、この場合は壁の防湿・気密シートを施工したあとに天井下地を組むことになります。 0.2ミリの厚さになると、ポリシートの重ね部分はパッキン材を使ったように下地ボードだけでしっかり密着します。これが気密性向上の大きなポイントです。 開口部やスリーブ管などとの取り合いは、気密用テープで止めつけます。
天井のシート張りは、上向きの骨の折れる作業ですが、しっかり施工しておきたい部分です。 桁まわりは壁のシートが桁まで張り上げてあるので、天井のシートを壁におろして壁のシートと重ね、下地ボードで押さえられるようにします。 間仕切壁は気密施工が終わってから造作に入るようにしたほうがすっきりしますが、工程を変えずに行うなら、間仕切壁の上部に間柱受けを入れて、先張りし、間柱を建てます。天井のシートはこの先張りと連続させて天井下地ボードで押さえられるようにしておきます。 |
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ここまで読み続けてくださった皆さんは、何度も“気流止め”という言葉を見ていると思います。グラスウールなどの繊維系断熱材を使う場合、気流止めは断熱性能を高めるためにたいへん大切な措置です。 図は2点ともに連載の中で使ってきたものです。在来木造の寒さは、気密性が低いために起きるすきま風ももちろんありますが、重大なのは壁の中を冷気が走ること。このため、防湿・気密シートによって外部の室内側を気密に張り、外壁下地合板と透湿・防水シートで屋外側を風密に張ったとしても、今ひとつ性能が上がらないということが起きるのです。 今ひとつ性能が上がらないときは、必ず施工を振り返ってください。どこか間違っていませんか、施工し忘れた場所はありませんか。間違いない施工を行えば、必ず所期の断熱性能は確保され、暖かくて省エネな住宅が完成するはずです。 さて、その気流止めですが、1階の床と壁の取り合い、2階の天井と壁の取り合い、下屋と壁の取り合いがポイントになります。床下から吸い込んだ冷気は天井裏まで抜ける間に室内から熱をもらい、暖められます。逆に言うと室内の熱は壁面に奪われて小屋裏に抜けてしまうのです。
気流止めの施工方法は前回触れましたが、取り合い部分をしっかり施工します。ただ、2階建ての場合は1階の天井ふところは温度的には室内空間となるので、1階天井と2階床の気流止めは不要です。胴差しまわりの先張りをしっかり行えばOKです。 また繰り返しになりますが、断熱材は隙間なく充てんします。そうでないと気流が流れる心配があるからです。 |
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本題に入る前に、あらためて1つ触れておきたいと思います。それは防湿・気密シートの厚さについてです。 10月初旬に札幌市内のある現場で見かけたのですが、建て方が終わったばかりの室内に入ってみると、胴差しまわりの先張りが行われています。ところがシートが薄いものだから、木材や配管との接合部で引き裂かれているのです。職人さんはおそらくかなり気をつけて張っているとみえて、施工はきれいなのですが、シートが薄いために裂けてしまうのです。 特に先張りは必ず0.2ミリ厚の防湿・気密シートを使ってください。そうしないとせっかくの苦労が報われない結果になりかねません。 本題に戻ります。今回は基礎断熱について。 在来木造を腐れから守り、暖かくするためには気密化が必要になりますが、やっかいなのは床部分の気密化でしょう。柱が建っているうえに筋交いもあり、気密層を連続するのがたいへんです。そこで基礎断熱が出てきます。 基礎断熱は床部分の気密化を基礎の外周部で行い、基礎と土台を気密化することによって床下も室内環境に取り込み、床まわりの断熱・気密化を省略する工法です。 1階床の気密化工事がほとんど不要になり、さらに床下を収納空間としても利用できる、などの利点があります。基礎断熱を採用した場合の床廻りの気密化は、基礎天端と土台の気密性確保さえ配慮すれば、床下が基礎コンクリートで囲われるためその他の部位は基本的に不要です。 基礎断熱材は基礎の外側だけ、内外両側、内側だけの3通りがありますが、寒冷地や準寒冷地では外側だけ、または両側とするのが一般的です。このとき、基礎外周部から内側90センチに土間下断熱材を敷くと熱損失がより少なくなり、土間下全面に張るより費用対効果が高まります。3×6尺の押出スチレンフォームなどを並べるだけです。 さて基礎天端と土台の気密化ですが、これは何通りかの手法があります。ここではもっとも施工しやすい方法について紹介します。 基礎打設後基礎天端にスポンジ状などの気密パッキンと防湿・気密シートが一体になった気密部材を敷き、その上に土台を乗せたあとシートを壁のシートと連続させます。シート部分は土台先張り用というわけです。 |
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この手法は概ね土間床工法の場合にも使えます。 基礎天端のレベルはプラスマイナス2〜3ミリ程度の高い精度が必要です。床断熱の場合は多少の不陸をスペーサーで調節できますが、基礎断熱の場合はそれはできません。またパッキン材は大きな不陸を調節するほどの隙間充てん能力はありません。パッキン材はあくまでもヘアラインのような細い隙間を埋めるものと考えて下さい。 天端ならしは一般的にはモルタルで行いますが、工程の合理化のためにサンダーがけ、つまり盛るのではなく削ることで天端レベルを出す方法を採用している工務店があります。 この方法のメリットは、土台敷きのタイミングを左官屋さんと天候に左右されずに決められることです。布基礎が現しとなる半地下などの空間を作るときは、見た目の面でもきれいに仕上がります。 パッキン材はスポンジ状と発泡ゴム状では特徴が異なるので、その点を十分理解して使わなければなりません。スポンジ状のパッキン材は厚さが10ミリが主流、20ミリ厚もあります。5分の1に圧縮して使うのが原則ですが、腰が弱いためすぐ圧縮できる半面、働き幅が狭すぎる場合もあります。一方、発泡ゴム状のパッキン材はパイプを2本寝かせたような中空構造の製品が多く、腰が強く弾力性があるため働き幅は広いのですが、アンカーをあまり締めすぎるとパッキンの反発力で土台がねじれる場合もあります。 基礎断熱の注意点としては、床下に熱源がないと床表面温度が2℃ほど下がり、初年度は若干冷たく感じる場合がある、床下スラブをGLより下げたり地盤排水が悪いときは床下漏水に気をつける、床下にたまりがちなハウスダストの掃除に予め配慮しておく―などです。 また、点検などのため床下は必ず余裕のある高さをとっておくべきです。 シート一体パッキン材の発売元
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