2017年01月11日(15:25)

トヨタC-HRの広報戦略と「昭和元禄落語心中」があぶり出す現代の幸福感

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あけましておめでとうございます。
今年もこのコラム、および白井をごひいきに。
よろしくお願いいたします。

ずーっと状態が変わらない右足ふくらはぎの張り改善のため、整体に通い始めました。
「ゆがんでいるのでしばらくはランニングを控えなさい」とのお達し。
お言葉に従い、しばらくはおとなしくしています。

* * *
 
この休みの間にひとつふたつ気になったことがあります。
ひとつは、トヨタ自動車のちょうちん記事をインターネット上でずいぶん見かけたこと。
おそらく、自分みたいな何となくネットを見ている人に向けて、仕込んでおいた記事を連射したのでしょうね。


「アンチトヨタ狙い撃つ新型C-HR」
「トヨタ1強時代」の始まりか

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こんな見出しを覚えている人はいませんか??
記事の中身はお粗末なものでしたが、見出しはけっこう引きつけますね。
狙いはトヨタ車以外に乗っている消費者です。見出しを見ただけでわかりますね。

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トヨタは新しい小型SUV(いちばんのブランドが日産のジューク、日本ではHONDAのヴェゼルだそう)を拡販する宣伝において、これまでになく口コミや広報を重視しているようです。
でね、なんせいまの日本の規範意識を作りあげたと言っても過言ではない徳川将軍家の出身地、東海・中部地方の企業ですから、やることはよく似ている。
景気が悪くなると、社員に「今年は家を建てるな」とお触れを出したりするわけです。
それはそれでいい面もたくさんあると思いますが、SNSや広報活動において口コミ拡散を狙うときは、やはりちょっとじゃまになる面もあります。

「人のうわさには戸を立てられない」のです
いや、戸を立てないのがインターネットコミュニティでありSNSです。

逆に戸を立てるのが徳川式・トヨタ式ですから、SNSとは相性が良くない。そこで、口コミ拡散を狙うなら、発信内容はいい面・悪い面を両面表記にしなければならないところ、いい点だけを書き連ねるメリット表記になってしまうわけ。
そんな記事は誰も拡散してくれない。結果として口コミは起きないわけです。

先ほどの記事の一部を抜き出してみます。
※アンチトヨタ狙い撃つ新型C-HRから引用
新型C-HR・開発責任者には、レースをこよなく愛する古場主査が任に付きました。最重要ポイントに「格好の良さと走りの良さ」を掲げ、開発当初は専用プラットフォームの新設も検討したというのですがら、半端なくハートが熱いデス。
※ここまで。


くだけた書き方の記事です。ターゲット読者層からの共感を得たいのでしょう。
しかし、ちょっと腑に落ちない部分がある。そこでこの部分を要約してみます。
「レースが好きな社員が責任者に就き、開発の最重要ポイントにかっこよさと走りの良さをかかげ、車台の新設計を検討した。これは責任者が熱い人であることを表す。」

装飾語句をなくしてしまうと、腑に落ちない理由が見えてきます。レースが好きでもそうでなくても、新型車の開発ポイントはデザインと性能です。そして性能を決める要素のおよそ半分は車台ですから、問題があれば新設計を検討するのは当たり前。それが、責任者の情熱と関係しないことはいうまでもないのです。
情熱的に書いたのでしょうか。残念ながら記事として筋が通らないので、メリットもよく見えないというやや残念な結果です。
この記事を口コミしたい人はいますか?

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日本の大手企業は、多かれ少なかれ、トヨタと似ています。
SNSや口コミ広報戦略が苦手なのです。
そこに、ボクたち中小零細企業の戦略がある。口コミでムーブメントを起こすことができれば、局地戦での勝機が見える。また、同時発生的に、あるいは連続・継続的に口コミを拡大できれば、少し小さな地域でも勝機が見えるかなと思います。
正月からそんなことを確認しました。
 
* * * *
 
せっかくだから、もうひとつのことを書いてみたい。
こちらは、インターネットコミュニティのなかで育ってきた若者たちについて感じたことです。そう、口コミを起こす当事者たちですね。

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お題は「昭和元禄落語心中」というアニメ。
この先、このアニメを知らない人は意味不明になるので、最後の結論だけをお読みになることをおすすめします(笑)。

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何となくJCOMを見ていたら、「昭和元禄落語心中」の1話から13話まですべて放送する一挙放送がかかっていて、3話くらいから目が離せなくなりました。
落語を愛する2人の男、男を愛する1人の女が昭和を生きる話です。

久しぶりに昭和のドラマを見た気がして、なつかしさと、昭和が好きな自分を再確認してしまいました。
昭和という時代は、戦争抜きには語れません。主役級の3人はみんな、戦争という大きな背景のなかで家族や人のつながりを断ち切られ、家庭のない孤独な心を抱えています。
生きるために男は仕事をする、そこには好きとか嫌いとかが挟まる余地がない。
生きるために女は男に依存する。そこには自立という選択肢がほとんどない。
ひとは深い悲しみを背負い、大きな優しさが生まれてくる。

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こういうアニメを、平成年代の子ども・若者達がたのしく見ているのが、ちょっと驚きでした。
「こんな古い世界観を楽しく見るんだ・・」

満たされたなかで生まれ育ち、いつも選択肢が用意されているのに、選択をせずに生きている多くの若者たち。
彼らにとって、昭和がむしろ新鮮なのかもしれませんね。

昭和とは選択肢がひとつしかない時代でした。では不幸だったのか。そうではない。人はひとつのことをやりきることで生まれる幸せを知り、社会がその成果を認めるおうようさがある時代でした。
昭和は絶望の時代であると同時に、定めに従ってやりきることで花開いた経済や文明が乱舞する元禄時代でもありました。
しかし、最後は心中なのですね。

ボクは家庭では「明治の男」と呼ばれていますが(明治大学出身だから、ではなく、男尊女卑だからだそうです)、これからは「昭和を愛する男」と呼んでほしいと思いました。

ま、そんなことどうでもいいのですが(笑)。

要するに、
選択肢が多すぎて選べない時代
VS
選択肢がひとつしかない時代

どちらが幸せかといえば、選択肢が多ければいいというものでもない。若者の意識がいま、そうなって来ている感じがしました。
若者たちがここまで、このアニメに心を引かれるのは、「昭和の幸福感」が心を打つのではないかと思います。

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ちなみにボクは、みよ吉にほれました(笑)。
amazonプライムの会員なら、無料で第1期すべてのアニメを見ることができるようです。
http://rakugo-shinju-anime.jp/onair/


※クルマの画像は以下から拝借しました。昭和元禄落語心中は公式サイトから拝借しました。
http://is12.jp/rk-25.html
http://car-moby.jp/15548
http://rakugo-shinju-anime.jp/

カテゴリ:日記 |

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PROFILE

編集長 白井 康永

家づくりを変えたいという野望を持ち、北海道住宅新聞、札幌良い住宅jp を中心に、少子化の激流のなかでわれわれが日本を導きます.時にひょうひょうと(笑).
北海道・札幌市生まれ54歳。血液型O型.新卒1年、専門学校に通う娘たち、高校を卒業した息子あり. 休日にやってること:のろまジョギングとテレマークスキー.

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