2016年12月15日(16:56)

これで良いのか断熱改修(頭の整理中)

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先週はおもしろいセミナーがありました。

断熱住宅のサイディング外壁の上から断熱材を張って断熱リフォームする新しい断熱改修と、2000年以降の建築にもかかわらず寒い、使いにくい住宅をフルリフォームした事例。これらを紹介したうえで会場で議論しましょうという企画でした。

外壁の上から行う断熱改修については、ボクのfacebookで紹介し新聞の記事でも書きました。
要点をまとめると、通気層を一部ふさぐ、サイディングのうえから断熱材を施工する、その上に軽量な樹脂サイディングを施工して終了。

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ポイントは、既存外装材を撤去する費用で断熱を付加しましょうというローコスト改修。通気層については大いに議論もあるところですが、企画した北海道科学大学・福島明教授は「気密住宅なら大丈夫」と説明しています。


もう一方の住宅は、2002年に新築したものの初年度から寒い、しかも家の中に雪が吹き込むという50年前のクオリティだったそう。おまけに間取りが非常に使いにくく、階段は危険なまわり階段で、上り下りが多い1階車庫の3層構造。このまま住み続けることはキツイということで、建替も含めて1年がかりで検討した結果、3階をなくして面積を縮小したうえでフルリフォームした。間取りも完全に変更。


ボクが事務局を務めるあったかリフォーム倶楽部という断熱リフォームの推進団体では、「300万円の断熱リフォーム」「100万円の断熱リフォーム」を展開しています。こちら>>
フルリフォームがいいことは当然だけど、いつまで住宅を使うかなど費用対効果を考えると、答えはひとつではない、とボクは考えています。


福島先生の今回の取り組みは、気密性能が悪いために断熱性能を引き出せない多くの北海道の住宅ストックに対する答えではなく、気密性能は良いが断熱は100mmレベルというまあまあの数があるはずの道内住宅ストックに対するひとつの提案だと思います。
福島先生の挑戦は、これまでの常識からすると、すべてがタブー。ただし、気密性、耐震性の初期性能が高く、躯体換気もしっかりしている物件なら、外装交換の際に最低限の出費で断熱性能を高めることができることを示しています。

これから気密住宅のストックが増えていくわけで、断熱のみ厚手化したい場合、福島先生の手法は有効だと思います。一方、現状の機能・性能があまりにお粗末な物件は、これまで通り大手術するしかない。

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一方の減築・フルリフォームは、まだまだ機能・性能が不十分な家に対する改善方法として、多くの課題を残しながらも現状でのベストな答えを出した思います。

設計した山本亜耕氏は、この工事を通じて3階を解体するたいへんさ、大量に発生する建築廃材とその処理の難しさなど、新築工事にはない難しさと直面し、「ストック住宅の改修技術がまだほとんど確立していない現状を身をもって知った」と語っています。
例えば石こうボードビスに代表される抜きにくい金物類は、新築時の高い施工性と引き換えに、解体・再建をとてもめんどうにしてしまいました。

もうひとつの論点はまさに「ストック社会の建築」、改修の基本技術と教育の問題でしょう。
亜耕さんはこう語っていました。
新築中心で進んできた戦後の住宅業界は、これまで、既存住宅の改修について、さまざまな整備を進めてはいる。ただ、まだまだ不十分。
設計者は既存住宅の改修に関する教育をまったく受けておらず、学校教育でもまだ行われていない。施工については、まだまだ会社と個人の経験に頼っている。

インスペクションが広まって、既存住宅の診断が、不動産流通の場面でも取り入れられるようになってくるでしょう。ではその後どう改修するか。どうローコストに抑えるか。
今回のセミナーは、そういった課題をボクたちに突きつけるかたちになりました。

いろんな断熱改修方法が提案されています。
今後は、新築よりめんどうな施工管理、建物の出来に反映しないさまざまな施工コスト、こういった問題をどう解決していくかが大きなポイントのひとつになるでしょう。

カテゴリ:ie家 |

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PROFILE

編集長 白井 康永

家づくりを変えたいという野望を持ち、北海道住宅新聞、札幌良い住宅jp を中心に、少子化の激流のなかでわれわれが日本を導きます.時にひょうひょうと(笑).
北海道・札幌市生まれ54歳。血液型O型.新卒1年、専門学校に通う娘たち、高校を卒業した息子あり. 休日にやってること:のろまジョギングとテレマークスキー.

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