新聞記事
2011年12月05日号から
再開エコポとF35S金利優遇
新旧制度内容の違いはココ
11月21日に今年度第3次補正予算が成立し、終了していた住宅エコポイントとフラット35Sの金利引下げ幅拡大が内容を変更して再開された。ここで再開後の変更点を中心に各制度のポイントをQ&A形式でまとめた。
住宅エコポイント
新築の要件変わらず
耐震改修は新耐震適合が条件
Q...対象となる新築・リフォームの要件と着工・着手期間は?
A...新築は従来と同じく木造であれば次世代省エネ基準(11年基準)をクリアする住宅またはトップランナー基準相当の住宅、木造以外はトップランナー基準相当の住宅が条件。
リフォームは「①次世代省エネ基準をクリアする窓の断熱改修」や「②一定量のノンフロン断熱材を使った外壁、屋根・天井、床・基礎の断熱改修」が必須条件。さらにこれらの断熱改修とセットで行うことでポイント発行対象になる工事等として、バリアフリー改修や太陽熱利用システム・節水型トイレ・高断熱浴槽の設置のほか、新たに耐震改修と瑕疵保険加入が加わった。
対象となる着工・着手期間は、新築が今年10月21日から、リフォームが今年11月21日からで、いずれも来年10月31日までとなる。
Q...リフォームで新たに追加された耐震改修は、どの程度の工事が必要?
A...国土交通省住宅生産課によると、耐震改修と瑕疵保険加入の要件は今月上旬に発表予定。
木造であれば耐震診断の評点を1・0以上として現行の建築基準法の耐震基準に適合させるなど、現在減税措置を受けられる耐震改修の要件と同じになる方向で考えているという。そのため新耐震基準が施行となった昭和56年6月1日以降に建築確認を受けた住宅は対象外となるようだ。
なお、耐震改修によるエコポイントと減税措置は両方受けられる。
ポイントは新築15万、
リフォーム最大45万
Q...ポイントはどのくらいもらえて、どんなものと交換できる?
A...新築は1戸あたり15万ポイントで、東北・北関東・信越などで東日本大震災の特定被災地域は30万ポイント。太陽熱利用システムを設置する場合はさらに2万ポイント追加となる。
リフォームは断熱改修の場合、工事部位ごと内容に合わせて2千〜10万ポイントが発行され、一緒に行うバリアフリー工事は最大5万ポイント、太陽熱利用システムなどの設備機器設置は各2万ポイント、瑕疵保険加入で1万ポイントを発行。これらの合計で最大30万ポイントがもらえる。耐震改修はこれらと別枠で15万ポイントが加算され、その場合は最大45万ポイントがもらえる。
ポイントは東日本大震災被災地の特産品・義援金などの復興支援商品や、省エネ家電・リサイクル製品などのエコ商品と交換可能。ただ、今回はポイントの半分以上を復興支援商品と交換することが条件となり、金券などもエコ商品の購入のみ使えるものに限定されることになる。具体的な交換商品は今月下旬以降に決まる予定だ。
Q...即時交換は今回も可能?
A...これまで通りポイントは、新築・リフォームを行う業者が追加的に実施する工事との即時交換が可能。ただ、発行されたポイントの半分は復興支援商品との交換が条件なので、即時交換でも使えるのは発行ポイントの半分までとなる。
申請書類等は
原則従来通り
Q...ポイント申請にはどんな書類が必要?
A...新築・リフォームとも、申請書類の種類はこれまでと変わらないが、リフォームで追加された耐震改修と瑕疵保険加入はそれぞれ新たに書類を用意することとなる。どのような書類かは現時点(11月30日現在)でまだ明らかになっていないが、耐震改修については建築士事務所や性能評価機関などが発行する住宅耐震改修証明書が必要になる見込み。
また、申請書や工事証明書、断熱材の納品書や施工証明書などの書式は改訂される予定なので、従来の書式は使わないようにすること。
Q...ポイント交換の期限は?
A...ポイント発行申請の受付開始時期は、来年1月中をメドに調整中だが、申請受付締切は新築戸建てが平成25年4月30日まで、新築共同建てが同10月31日まで(11階以上の共同建ては平成26年10月31日まで)。リフォームは平成25年1月31日までだが、共同建てで耐震改修を行う場合は同10月31日まで(11階以上の共同建ては平成26年10月31日まで)。ポイントの交換期限はすべて平成27年1月31日まで。
なお、国交省では全国13都市で再開された住宅エコポイントの説明会を開催。詳しくは3面の告知記事を参照のこと。
フラット35Sエコ
金利0.7%引き下げ
当初5年間、被災地は1.0%
Q...今年9月末までの金利引下げ幅拡大と何が変わったか?
A...平成21年度の緊急経済対策で実施されたフラット35Sの金利引下げ幅拡大は、20年金利引下げタイプも含めて当初10年間の金利を1・0%引き下げるものだった。
新たに実施される金利優遇措置は「フラット35Sエコ」と言い、金利Aプランと金利Bプランを用意。いずれも金利引下げ幅拡大期間を当初10年間から当初5年間に短縮するとともに、金利引下げ幅を1・0%から0・7%とした((東日本大震災被災地は1・0%のまま)。6年目以降の金利は、金利Aプランは従来の20年金利引下げタイプと同じく20年目まで、金利Bプランは従来の一般的なフラット35Sと同じく10年目まで、0・3%引き下げられる。
対象となる住宅は 金利Aプラン・Bプランとも次世代省エネ基準クリアが必須で、Aプランはさらに従来のフラット35S20年金利引下げタイプの①省エネ性の基準②耐久性・可変性の基準③耐震性の基準④バリアフリー性の基準―のうちいずれかに該当することが必要。
なお、従来のフラット35Sは「フラット35Sベーシック」と名称変更し、0・3%の金利引き下げ期間が10年のタイプは金利Bプラン、20年のタイプは金利Aプランとして来年3月まで実施される。
来年10月31日
申込まで適用
Q...実施期間はいつまで?
A...今月1日以降の資金受け取り分から実施し、来年10月31日申込分まで適用する。ただ、予算金額に達する見込みとなった場合は、予定より早く受け付けを終了するとし、その際には終了する約3週間前に告知するとしている。

Q...このほかに東日本大震災被災地への優遇措置はないの?
A...住宅金融支援機構では、今回の第3次補正予算成立にともない、これまで行ってきた災害復興住宅融資の金利引下げや、元金据置期間と償還期間の延長、融資申込期間の延長などを継続実施するとともに、構造や建て方によって細かく区分していた融資限度額を、被災者にわかりやすく簡素化するなどの措置を行う。
また、返済中の被災者に対して、返済期間の延長や振込猶予期間中の金利引下げ措置の拡充などを行う措置も継続実施となる。
2011年11月25日号から
強風地域での換気 1
高性能住宅Q&A 756
C値0.5以下と風密性
Q...節電や生活スタイルの見直しなどの影響で、われわれ住宅業界もいっそうの省エネ住宅を提案する必要があると思い、来春からスタートする予定です。ただ、この地域は風が強いため、換気についてはいつも悩みます。どうしたらいいでしょうか(道南・工務店)
A...まず、強風地域で大切なことを整理してみたいと思います。その次に換気について見ていきましょう。
風が強い地域は、言うまでもなく断熱性能が低下しやすくなります。
気密性能を高めC値を小さくするとともに、透湿・防水シートなどによって風密性能とでも言うべき風に対する気密性を高める必要があります。
風速と空気漏れの関係を調べた資料があります。
漏気によって実際にどれだけ熱が持ち去られるかを把握することは難しいのですが、気密レベルに応じて風が吹いた時にどれくらいの漏気量が発生するのかを計算することはできます。この資料と知見は、(有)北欧住宅研究所・川本清司氏によるものです。
それによると、風や温度差による漏気を一定量以下に抑えるために求められる気密性能(相当隙間面積=C値)は、強風地域では0・5cm2/m2以下になりそうです。
※続きは試読をお申し込みください。
(伝言欄に「11月25日号から希望」とお書き添えください)
http://www.iesu.co.jp/publication/newspaper/
2011年11月15日号から
「乾燥感」と加湿対策
高性能住宅Q&A 755
夜間対策と正確な湿度計
Q...乾燥でノドが痛くなるので加湿器を使ったら、床が濡れてしまいました。タオルを濡らして干したら、ニオイがついていやな感じ。何かいい方法がないかと悩んでいます(札幌・ホームオーナー)。
A...高額な加湿器やパネルヒーターに引っかけて使うパッシブ加湿器など、思いつく方法はいくつかあります。体験も含めて少し紹介してみましょう。
高額な加湿器の使用感
完全に気化してから放出するので、床が濡れるということもないし、空気が臭いということもない。ただ、強運転だとあっという間にタンクの水がなくなってしまう一方、弱運転だとイマイチ加湿効果が弱い(ボネコ気化式加湿機)。
パッシブ加湿器の使用感
給水は一日1回で、すべての放熱器(パネルヒーター)に1台ずつかけている。洗濯物を室内に干しても、昼間に乾燥してしまうためか、気になる夜間の乾燥感改善につながらない。
パッシブ加湿器(アメニア)は、湿度計のパーセンテージには反映しないけど、寝ている間にノドが渇いて目がさめるということがなくなった。
* *
取材の中でわかったことがあります。冬場の室内乾燥の問題は、乱暴ですが突きつめれば①夜間時間帯②湿度計の%改善③湿度計の数値を見ただけで不安(20%台)―に集約できるようです。
①については、とても重要な情報です。あかちゃんやアレルギーのひどい人がいれば別ですが、小学生以上になれば問題は夜だけに限定することもできます。そうすれば加湿器の使用タイミングや、場合によっては洗濯ものなど、対策がいくつか考えられます。
②湿度計の「%」を20%から25%に"改善"することが相当難しいことはご存じの通り。そこで、新築時にできるだけ正確な温湿度計を贈ってみてはいかがでしょうか。そして、1~2年後に新しい温湿度計を再度プレゼンとしてもいいのでしょう(計器の更新です)。
精度の高さを追求したらきりがないのですが、いま最も精度が高い市販品とされているのがこれです。
「エンペックスSuperEX高品質温・湿度計」。価格は1コ2千円~3千円台。
同じ温湿度計を各社が事務所に設置しておけば、客先と温度・湿度を比べることもできます(厳密にはムリですが)。
③「湿度20%という表示を見ただけで不安になる」と答えた主婦のように、数字が一人歩きするきらいがあります。だから、正しい湿度計が大切ですし、ユーザー教育が大切でもあると、再認識しました。
ボネコ通販HP
http://www.cataloghouse.co.jp/living/dehumidification/1101246.html
アメニアHP通販
http://www.njkk.co.jp/shop/amenia/index.html
エンペックスHP
http://www.empex.co.jp/
2011年10月25日号から
防湿層室内側の断熱はNG?
高性能住宅Q&A 754
結露防止計算で確認
Q・・・100mm以上の高断熱を目指して、外張り断熱に充てん断熱を加える場合や、リフォームで外壁の外側に断熱付加する場合があります。ところが長期優良では通らないケースがあると聞きました。どういうことですか(札幌・工務店社長)。
A・・・この問題は少々ややこしいので、図を見ながら問題がどこにあるのかを説明したいと思います。
図1のような断熱構成があるとします。いわゆる充てんと付加の複合断熱で、充てん断熱材は高性能グラスウール16K100mm、外壁側付加断熱はフェノール/ウレタン55mm。この場合、充てん断熱と付加断熱の断熱性能はほぼ1対1なので、防湿層の位置は室内側(石こうボードの下)になります。
では図2はどうか。充てん断熱が半分の50mm。断熱性能はほぼ2対1となり、カナダR―2000住宅マニュアルではこの場合、防湿層を断熱性能で室内側から3分の1、すなわち外壁下地の位置に置いてよいとしています。同様のケースは、外張り断熱の充てん付加断熱と、断熱改修の外張り付加があります。
図3はどうでしょうか。付加断熱が室内側になり断熱材は充てんと同じグラスウールで45mm。断熱性能はほぼ2対1ですから、防湿層は構造体の室内側でいいことになっています。
ところが長期優良住宅(住宅性能評価)では図2も図3もNGです。
基本的には、防湿層を断熱層の中におくことを性能評価制度では想定していないようです。なので、もしそういう断熱構成を考えるなら、結露防止性能が充分であることを「内部結露計算シート」(住宅性能評価・表示協会事務局)によって確かめよ、ということになります。
札幌を例に計算した方によると、断熱性能は3対1になったそうです。カナダR―2000よりもかなり安全側です。
これを先の図2、図3に当てはめると、図2では外張り断熱材が87mm必要になり、図3では135mm。
最後に、もう一つ大切なことですが、等級4(次世代省エネ相当・Q値=1・6W)をクリアするだけなら、防湿層は断熱材の室内側に設置することで基準をクリアするはずです。申請の手間や時間を考えても、防湿層の室内側に断熱材を配置するのは得策でないと思います。
住宅性能評価基準が見直しになる期待もありますので、もう少し様子を見守りたいと思います。
2011年10月05日号から
30℃で暑くないって本当?
高性能住宅Q&A 753
床壁温度を上げない
Q...最近北海道も夏暑くて、まるで本州みたいです。ところが本州の方が『30℃でも暑くない家がある』とウソみたいな話をするのを聞きました。どうにも納得できませんし、暑ければエアコン入れればいいじゃないですか。(札幌・工務店社長)
A...このところ夏の暑さ対策の記事を立て続けに取り上げています。というのも、北海道の夏が長く暑く湿っぽくなってきているからです。そして、編集部がふた夏に渡って行ってきた日射遮へいの効果検証から、信じられない効果があると実感したので、この結果を伝えたいと思います。
あり得ないことがある
高断熱・高気密住宅の黎明期のころ、完成住宅の見学者から「床暖房しているんですね」と質問されたことを思い出します。『冬は床が冷たくて当たり前。暖かい床は床暖房しているはず』本州から北海道へ視察に来られた方も異口同音におっしゃったものです。でも、床暖房はしていません。ちゃんと断熱しているだけなのです。
これと同じ信じられない話が、夏の環境でもあるのかどうか。
結論から言えば、「床暖房しているように温かい断熱床」があるように、「冷房なしでも平気な日射遮へい住宅」があります。ポイントになるのは、床・壁・天井の表面温度です。
わかりやすいところで、冬の話からまいりましょう。断熱床は室温以上の表面温度になることはありません。それなのに暖房しているほど暖かいと感じるのは、冬に室温とほぼ同じ温度の床を歩いたことがないから錯覚するというのと、表面が20℃以上あればじゅうぶん暖かく感じるということでしょう。『あり得ないことがある』のが断熱住宅です。
夏も同じことが起こりうると想像してみてください。
カギは屋外で日射をさえぎること
なぜ家の中が暑いか。自分は室温が高いからだと思い込んでいましたが、どうやらそれは勘違いのようです。窓からの日射が周壁を加熱させていることにこれまで気がつきませんでした。室温30℃程度までなら、周壁が加熱しない限り暑くは感じないのです。
周壁温度を抑えるためには、①断熱性を高めて屋外から室内を遮断する②通気層で外壁・屋根面の過熱を冷却し影響を少しでも減らす③窓面の外部遮へいで日射を室内に入れない―ことが必須です。必須条件が冬より1項目増えています。それが③の窓面の外部遮へいです。
ふた夏に渡って行った日射遮へいの効果検証では、ひと夏めは南東面だけを遮へいし、南西面は軒が深いのでまあいいかと手を打ちませんでした。もちろん、南東面の遮へい効果は絶大でしたが、やはり室内が27℃以上になると暑い。そして太陽高度が下がる8月中旬から9月にかけて真夏日があると、家の中はかなり熱せられる。
ふた夏めは南西面も遮へいしました。7月から8月上旬にかけてはひと夏めと違いが感じられなかったのですがお盆ころから明らかに違いが実感できました。室温を見ると28、29℃に達していても、暑くないのです。こんな経験は初めて。まさにあり得ないことが起きたのです。
そして8月11日を迎えます。
この日はお盆休みの初日。札幌は最低気温が24・9℃でほぼ熱帯夜、最高気温が34℃近くに上がった残暑厳しい1日でした。
グラフはわが家の室内温度と気象台気温を30分おきにグラフにしたものです。室温はいつも外気温より低いのですが、この日は外出したため、窓開けによるコントロールが夕方までできず、その結果室温が30℃に達しました。
帰宅して窓を開けると、一気に室温が下がっているのがわかります。外気温が下がると素直に室温も下がるのは室内に熱源がないから。逆に言えば、室温が下がらない家は、通風が悪いのではなく室内が日射で熱源を抱えてしまったからです。
ウソっぽい話ですが、本当です。もう一度冬を思い出してください。床暖房していないのに床が暖かいなんて、ウソくさい話ですが、本当なのです。
最後に本当っぽいウソ

『断熱住宅は夏暑い』は、本当っぽいけどウソです。その理由はここまで見てきたように、夏暑い理由は日射による周壁の加熱。『断熱効果で保温されるから暑い』というのは本当っぽいウソです。断熱が悪ければ天井からの照り返しも加わって住宅はさらに暑くなります。
関東以西には『断熱住宅は夏暑い』と語る専門家もいますが、よく聴くとけっきょく断熱の効果をわかっていないですね。
夏の暑さ対策では本州に学ぶことも多いですが、ベースは断熱にあることを忘れてはならないと思います。(本紙編集長)
画像
日射遮へいした室内は、意外と明るい。外からの視線をさえぎる効果もある
外付けロールスクリーンのカタログ。何を使うかは設計者の腕の見せどころではないか
2011年09月25日号から
雨の日も窓を開けたい
高性能住宅Q&A 752
Q...お客さまから『夏暑い。雨が降ると窓が開けられない』とグチをこぼされました。今や冬暖かい家は当たり前になりましたから、「夏はガマンして」とは言いにくく、エアコン設置をすすめるしかないのが現状です。コストを上げずに工夫する方法はありますか(札幌・住宅会社部長)
A...8月5日号1面で、夏の暑さを防ぐ方法として、外部での日射遮へいがとても重要であることをまとめました。理由は、室内の加熱を防ぐことができればエアコンのあるなしにかかわらず格段に快適になるからでした。
今回は雨の日についてです。9月初旬に台風で紀伊半島を中心に大きな被害をもたらした時、道内も前線や台風の影響で大雨となり、しかも気温が高かったために家の中がひどく不快になったことがグチの引き金になったそうです。
札幌では30年ぶりの洪水被害が心配されるほどでしたから、そうそうあることではないのかもしれません。ただ、夏の暴風雨は窓を開けられないのでキツイ、そもそも風がなくても雨の日に窓を開けられないという問題があることも事実です。
もちろんエアコンを使うのも1つの方法です。ただ、ここではそれ以外の方法を考えてみます。
工務店・ハウスメーカーの皆さんは、雨の日、どんな家で窓が開いていて、どんな家で窓が閉まっているか注意して観察したことがありますか?
外開きはだいたい閉まっています。引き違いは少しだけ開けている窓もありますが、やはり閉めているケースも多いようです。あいているのは、回転窓や回転しないすべり出しタイプ。それにほとんど見かけませんが内倒しです。
窓を開けられない理由は、言うまでもなく雨が吹き込むから。その原因は、主には窓の開閉方式ですが、軒の出やひさしも雨の吹き込みに影響があります。
ただ、仮に軒が出ていても、少し風があれば雨は吹き込むものですし、2階建てなら1階の窓は少量であれ雨が入ります。
回転窓や下からのすべり出しタイプは、突き出した障子が傘の役目をするため、多少の風では雨はまったく入りません。
すべり出しなので開口の見付面積は小さいのですが、換気窓としては充分に機能します。ただし、外部遮へいと組み合わせるときは、障子に遮光スクリーンをつけるか、突き出し幅を考えて腕木を取り付けて遮へい部材をつるすことになります。
この点、引き違いは突き出しがなく優れていますが、ハッキリ言って夏は雨、冬は雪が吹き込み、晴れた日しか窓が開けられません。引き違いは軒の出が相当深くないと、床を濡らします。
外開き(たてすべり出し)は障子そのものが濡れる、強風時に障子がばたついて不安、という声を聞きます。風に弱いのです。
すべり出し窓をうまく使うことが、設計者の腕の見せどころではないでしょうか。
補足:8月25日号に掲載した「Q&A・窓ガラスと太陽熱取得」について、追加の質問をいただきました。趣旨は、『太陽熱取得を中心に考えて、南面のガラスをペアにしようと思うがいいガラスはあるか』という内容です。
日本板硝子にペアマルチEAという商品があります。3+12+3のLow―Eペアで、断熱性能(U値)は1・9Wと普通のLow―Eより若干劣りますが、日射熱取得率(η)は0・74できわめてよく、透明ペアに迫る性能です。ちなみに透明ペアはそれぞれ2・9W、0・79です。なお、このガラスをよく紹介しているのは室蘭工業大学鎌田紀彦教授です。

写真:すべり出し窓をうまく使いたい(エクセルシャノンのカタログから)
写真:ペアマルチEAカタログから
2011年08月25日号から
窓ガラスと太陽熱取得
高性能住宅Q&A 751
灯油100~200リットル増加
Q・・・省エネ性能を高めようとすると、ガラスの日射熱取得率がけっこう重要になると聞きます。サッシやガラスによってどのくらいの違いがあるのでしょうか。(十勝・工務店社長)
A・・・「ガラスによって太陽熱取得量に大きく差が出る」とずっと以前からおっしゃっているのが室蘭工業大学の鎌田紀彦教授です。
この問題に入る前に、基本をザクッと抑えておきたいと思います。
ガラスから太陽熱をどれくらい取り込めるかは、日射熱取得率(η、イータと読む)で表します。ガラスがない時を100%とした場合、1枚ガラスで90%、ペアガラスで80%、トリプルガラスで70%となります。ガラス1枚で10%ずつ低下するのです。ガラス厚さによっても少し変わってきます。
ペアガラスなどの場合、ガラス層に空気を封入しますが、これは日射熱取得率に影響を与えないと考えられています。なので、アルゴンもクリプトンも空気も同じと考えてOKです。
一番やっかいなのがいわゆるLow―E膜と言われるコーティングです。これによって日射熱取得率が大きく変わります。
ペアガラスの場合、透明ペアが80%、これに対しLow―Eペアは40~70%まで大きな開きがあります。
トリプルとなるとその差は2倍以上になります。透明トリプルが70%、これに対してLow―Eトリプルは30~60%の日射熱取得率。
大切なのは住宅の省エネルギー効果ですから、単純に日射熱取得率が高ければよいというものではなく、窓全体の断熱性(熱貫流率)と日射熱取得の相関関係でベストバランスが決まると言えるでしょう。
一般的には、冬場の日射が期待できる地域は日射熱取得率を優先して考える。日射が期待できない地域は断熱性を優先して考えることになりますが、開口部の大きさ、朝晩の冷え込みなど、ほかにも重要な要素があります。
また、Low―E膜の色で分けると、一概に言えませんが少々乱暴に言うと、日射熱取得率が高いのが透明とブルー、低いのがグリーンとブロンズとなっているようです。
問題は南面ガラスの選択
じつはここまでが基本で、日射熱取得率が本当に問題になるのは、Low―Eトリプルガラスを南面に使うのが是か非かという点だと思います。
断熱性を重視すれば北海道は当然トリプルになります。しかし日射熱取得率が大きく落ちてしまう製品もあるからです。
断熱性が同程度なら、日射熱取得率の高い製品またはガラスを選んだ方が当然省エネに貢献します。
すべてカタログ性能ですが、トリプルガラスサッシの熱貫流率は1・2~1・3W程度でほぼ共通していますが、日射熱取得率は50%台から30%台までけっこう幅が広いことがわかりました。ダブルLow―Eタイプは日射熱取得率が低くなるようです。
そこでにQ値・暖房エネルギー計算ソフト「QPEX」で暖房エネルギーを試算してみました(グラフ)。条件はQPEXの標準データのまま、南面の窓のみ仕様変更しました。
札幌では、窓を木製トリプルLow―E、日射熱取得率56%のサッシにすると、灯油換算で1203L。これに対しダブルLow―Eサッシ(日射熱取得率32%)にすると、Q値は若干向上しますが灯油消費は増えて1334Lとなり、130Lも増加します。
日射条件のよい帯広で計算すると、その差はもっと広がります。日射熱取得率が高いサッシでは1334Lに対し1523Lで、その差は190Lにもなります。
画像
QPEX上で南面のサッシ(ガラス)の仕様を変更すると、η(日射熱取得率)も変わる。エネルギー消費量の結果に注目
2011年05月25日号から
床下のカビ対策
高性能住宅Q&A 749回
地盤全面に断熱材
Q・・・昨年、基礎断熱工法を採用して以来はじめて、お客さまから「床下がカビくさい」とクレームをちょうだいしました。今後の新築ではそのようなことがないように対策を打ちたいと思っています。いい方法がありませんか。(旭川・工務店)
A・・・昨夏の床下カビ発生の大被害を受け、研究者が動き出してくれたようです。結論から申しますと、床下地盤面全面にプラスチック系断熱材を敷き詰めること。
床下の環境は本当に微妙です。昨年もQ&Aで触れたように、北海道とは言え夏場の床下は、かなりカビが発生しやすい環境になるのです。
しかし、実際には発生する家としない家があります。おそらく微妙な違いでしょう。その違いとは、やはり床下の温度だと考えられます。
床下の温度が夏も低い理由は①地下水位が高く熱が奪われ続ける②断熱が不足して熱移動が大きい③冬場に床下を冷やしてしまった―ということが実際のところは考えられますが、多くは複合的で、事前に危険度がわかるケースは、地下水位が高い場合、山沿いや林が多くいわゆる夏も涼しい地域。それ以外は事前の危険把握は難しいと思います。
対策は土間コンあるいはベタ基礎を打つ前に断熱材を50~100㎜敷き詰めるというもので、そのコストアップはけっこうな負担になります。
ただ、熱損失の面では、基礎断熱時に床下を断熱しなかったこれまでのやり方を改める必要は出てきています。それは、基礎断熱工法の断熱性評価が厳しくなりそうである点、土の熱伝導率を厳しく見るようになった点が主な理由です。諸外国の例を見ても、スウェーデンの無暖房住宅では床下地盤面全面に壁と同レベルの断熱を敷き込んでいます。
費用はどのくらいでしょうか。押出スチレンフォームB3種50㎜を20坪の床下に敷き詰めたら40枚。1枚仮に1800円として7万2千円です。
さて、床下敷き込みの効果のほどですが、いわゆる測定データがいま手元にあるわけではないのですが、地盤全面を断熱した住宅は先の夏もカビ被害がなかったとある研究者は語っています。
危険な予感がする敷地の場合は、迷わず断熱材を敷き込んだほうがいいようです。
(昨年9月25日、10月15日に関連記事)
2011年04月25日号から
高性能住宅Q&A 748回
熱交換換気に興味 5(最終回)
省エネより暖房節減に効果
前回は、換気を選ぶときは『何を一番解決したいのか』を基準に考えるべきだというところまでいきました。
いよいよ質問=『熱交換換気に興味があるが、何を判断基準に選んだらよいか』への回答です。
1.暖房費用の節約
2.エネルギーの節約
3.暖房負荷の低減
4.給気の加温
5.暖房機能
6.ネームバリュー
このうち、お客さま、および住宅会社が期待していることは、本当はどれでしょうか。
多くの方は『2.エネルギーの節約』がしたい『省エネのため』とおっしゃいますが、これまでの取材経験から、本当のところは『1.暖房費用の節約』または『3.暖房負荷の低減』のケースも多いと感じます。逆に『エネルギーの節約』が目的なら、その点でもっとも有利な北海道においても困難です。とくに一次エネルギーベースでは、かなりキツイようです。
同じく、『1.暖房費用の節約』についても、暖房熱源や電力料金メニューなどから考えてけっこうきついようです。ですので、もとが取れるかどうかもあまり軽々しく言えません。このあたりについては、機会があれば改めてまとめてみたいと思います。
『3.暖房負荷の低減、4.給気の加温』については、しっかりした機種の選定と換気システムの設計・施工で、おおむね実現できると言っていいでしょう。
熱交換換気を導入することで暖房負荷が減るのは確かです。ただし、まず躯体からの漏気がほとんどないこと(気密性=C値で0・3程度)、トイレやフロなどから多量の換気が屋外に直接捨てられることがないこと、換気運転の消費電力が小さいことを配慮してください。機械換気量がしっかり確保されることは当然の前提です。
給気の加温効果も間違いなくあります。ただし、吹き出し位置は第3種の給気レジスターと同じく、慎重に計画してください。道北・道東では熱交換換気でも真冬に給気が冷たいという話を聞くことがあります。仮に加温が主目的なら、外気導入ダクトの断熱をやや弱くすることで、室温による予熱が可能になります。ただし、省エネにはなりません。
暖房機能は、やはりヒーターがついていることがポイントになります。この点については製品開発が待たれます。
(いずれも連載3回目にも触れました)
まとめ
熱交換換気を選ぶ基準は、まず、①何に期待するかを見極めること、次に②熱交換効率だけに着目せず、③住宅内の空気の出入り(換気)のうち何割を熱交換器に入れられるのか、④消費電力はどうか、⑤配管設計はしっかりできるかを中心に考えてください。
* *
熱交換換気は決して悪いシステムではありません。ただ、過大な期待をするから、あるいは清掃しにくい製品選択と施工をしたり、住み手も清掃しないから、ときどき悲劇が起きるのです。そのことを理解した上で、採用することが必要だと思います。
(終)
2011年04月15日号から
高性能住宅Q&A 747回
熱交換換気に興味4
性能より効能で
4月5日号は休みました。震災の特集紙面になり、なかなか連続掲載ができないことをおわびいたします。
さて少しおさらいをします。熱交換換気に期待することを次のように挙げました。
1.暖房費用の節約
2.エネルギーの節約
3.暖房負荷の低減
4.給気の加温
5.暖房機能
6.ネームバリュー
そして、熱交換効率XX%」という評価基準だけでは、これらの期待に対する答えができないことを、1~5について見てきました。今回は6です。
6.ネームバリュー
連載の第2回に触れたように、「熱交換効率が何%なら、ネームバリューありと判断できますか?」と聞かれたとき、6番だけは答えが出ます。そして答えは「90%以上」になると思います。
熱交換換気は熱交換効率が高いとネームバリューが高まり、「いい機械」となりやすい。しかし、いい機械かどうかは、熱交換効率だけではわからないことは、連載2回、3回で触れてきたとおりです。
* *
最初の質問を忘れそうなので、原点に戻りましょう。
『熱交換換気に興味があるが、何を判断基準に選んだらよいか』というのが質問でした。そしてここまでで2つの判断基準が出てきました。
1.換気能力
2.熱交換効率
しかし、この2つともに判断が非常に難しいことも同時にみてきました。なぜなら、どちらも目に見えないからです。そこで、判断基準ではなく、『何を一番解決したいのか』を見極めた上で、商品選びをしたほうがわかりやすいということを言いたいと思います。
熱交換換気は安い機械ではありません。だから、『選ぶ理由』はとても大切になるはずです。何をしたいのか、それがまさに1~6の項目になります。
* *
さて、その話の前に、今回の大震災に関係する話をしたいと思います。
東京電力、東北電力管内でもっとも必要なのは夏場の冷房時をどうしのぐかという点です。冷房負荷を減らすために、従来は温度だけでなく水蒸気も回収する全熱交換器が有効だとされていました。
ところが、エネルギー的にみれば全熱交換器の効果はあまりないようです。すなわち、節電につながらないわけです。首都圏在住の建築環境系の先生の中には、「夏場トータルで冷房負荷を減らすためには、冷房期間を短くすることが大切。そのためには風を取り込む設計と、通風と相性のよい第3種換気がいい」とおっしゃる先生もおられます。
これには正直、驚きました。いずれ詳しくご紹介できる日が来ると思います。
2011年03月25日号から
高性能住宅Q&A 746回
熱交換換気に興味3
見えないだけに誤解も多い
前回は1回休みましたので、少しおさらいをします。熱交換換気に期待することを次のように挙げました。
1.暖房費用の節約
2.エネルギーの節約
3.暖房負荷の低減
4.給気の加温
5.暖房機能
6.ネームバリュー
そして、熱交換効率XX%」という評価基準だけでは、これらの期待に対する答えができないことを、1と2について見てきました。今回は3から。
3.暖房負荷の低減
熱交換換気には暖房負荷(暖房費)を節約する効果があります。この点が最大のメリットの1つだと思います。計算上は温度回収率(熱交換効率)が高ければ高いほど、暖房費が節約になるという計算結果になります。
ただ、1の暖房費用の節約でも見てきたように、ザッと探しても、換気システムのほかに、台所のレンジフード、(別系統なら)トイレとフロの換気、自然換気(空気漏れ)があるので、計算上の機械の温度回収率よりも実際の節約効果は低くなります。もし計算通りの節約効果だとしたら、むしろ換気不足を疑うべきです。
4.給気の加温
寒冷地ではこれも最大のメリットの1つです。そして計算上は室温と外気温の差、例えば30度あったとして、温度回収率90%なら27℃回収。つまり給気温度は室温より3℃低いだけということになります。ところが、給気温度が高くなる方法がほかにもあるのです。それもローコストに。外気導入から熱交換素子までの配管に保温しない、または保温不足だと、そこまでの間に外気が上昇するのです。ただ、これは熱交換換気の効果ではなく、ただの暖房効果です。
5.暖房機能
4の給気加温とも似ているのですが、こちらはむしろ暖房器を補完する、または暖房器代わりに使うという位置づけです。以前から熱交換換気暖房というシステムがありますが、最近では、暖房設備費を節約するために熱交換器を設置するケースがあります。この場合は、熱交換換気システムの給気側ダクトを暖房に利用する省コストがメリットの中心です。
※2011年3月25日号は全ページpdfをダウンロードしてご覧いただくことができます。
こちらへ
2011年03月05日号から
高性能住宅Q&A 745回
熱交換換気に興味2
熱交換効率、単体では判断できず
前回は、第3種換気を使っている工務店様からの質問で、『熱交換換気に興味があり、何を判断基準に選んだらよいのか』という声に対し、熱交換換気と省エネは、換気効果も省エネ効果も目に見えにくいため、ザッとあげても5つほど問題があることを指摘しました。今回はその続き。
* *
暖房システムなら、理由はともあれ暖まらなければ言い訳無用。しかし換気は機能が2分の1に低下しても(つまり換気回数が0・25回/hに低下しても)多くの場合は問題が起きません。よって換気不良という問題になかなか気がつかないのです。しかも換気しない、すなわち屋外に捨てる暖房熱の量が減ることで省エネには貢献します。これが熱交換換気システムだったら、間違って「省エネ換気」と言いかねないわけです。
換気排熱の低減を考えるときは、必ず空気質の維持とセットでその両立を前提としなければなりません。「省エネと空気質をどう両立させるか」という課題から出発して、この問題に迫りたいと思います。
さて、熱交換換気に期待するものを挙げてみました。
1.暖房費用の節約
2.エネルギーの節約
3.暖房負荷の低減
4.給気の加温
5.暖房機能
6.ネームバリュー
こういうかたちで個条書きにしたのは、整理して考えたいからです。世の中、「熱交換効率XX%」だけが評価基準のようになっていますが、それは換気機能の一部を表現したに過ぎません。住宅に装備するときは、住宅の省エネ性を評価するのであって、「熱交換効率」は一部パーツの性能に過ぎないことを確認しておきたいのです。
「熱交換効率」とは1から6のどれを指すのでしょうか。よく見ると、すべてに関係していますね。
もっと具体的に考えましょう。
1.熱交換効率が何%なら暖房費用を節約できるのですか?
2.熱交換効率が何%なら、エネルギーを節約したと言えるのですか?
3.熱交換効率が何%なら暖房負荷が低減したと評価できるのですか?
4.熱交換効率が何%なら、給気加温の効果があると言えるのですか?
5.熱交換効率が何%なら、暖房として機能すると言えるのですか?
6.熱交換効率が何%なら、ネームバリューありと判断できますか?
この中で答えが出るのは6番だけです。そして答えは「90%以上」になると思います。
1.暖房費用の節約
暖房期間が7ヵ月から8ヵ月になる北海道では、暖房費の節減は生活コスト圧縮に直結します。しかし、ザッと探しても、換気システムのほかに、台所のレンジフード、(別系統なら)トイレとフロの換気、自然換気(空気漏れ)があるので、機械の熱交換効率がその家全体の回収効率とは一致しないのです。だから、熱交換効率だけで節約になるかどうかを判断することはできません。
2.エネルギーの節約
灯油暖房が当たり前だった時代はともかく、熱源の多様化が進んでおり、しかも「省CO2」は家庭で使ったエネルギー量ではなく、「一次エネルギー量」で見なさいというのが今の世の中。そうすると、エネルギーの節約のために大きな役割を持ってくるのは熱源選択と断熱となり、換気熱の回収はメインではない。ゆえに熱交換効率だけでは節約になるかどうか判断できません。
乱暴な言い方になりますが、一次エネルギー量が少ないのは天然ガス。一方、電気は使いやすくかたちを変えている分、一次エネルギーは多くなる。このため熱源選択で家の省エネルギー性が大きく違ってくるということが起きます。
(続く)
一次エネルギーとは
基本的に自然界に存在するままの形でエネルギー源として利用されているもので、石油・石炭・天然ガス等の化石燃料、原子力の燃料であるウラン、水力・太陽・地熱等の自然エネルギー等自然から直接得られるエネルギーのことをいう。
これに対し、電気・ガソリン・都市ガス等、一次エネルギーを変換や加工して得られるエネルギーのことを二次エネルギーという。
通常、原油換算万トン、万キロリットル(万KL)として表示されることが多い。(EICネット 環境用語集から)
イラスト
熱交換器は1つのパーツ。家の省エネ性がこのパーツだけで決まるなら単純でいいのだが...(イラストは換気分野の世界的権威であるアーネ・エルムロート博士の資料から)
2011年02月25日号から
高性能住宅Q&A 744回
熱交換換気に興味1
空気質と両立が条件
Q・・・ずっと第3種のダクトセントラル換気を使ってきました。クレームがないし問題はないのですが、最近は同業の工務店が熱交換を試験的に採用しはじめたり、まれにですがお客さまから「熱交換換気を使いたい」という声があり、当社でも興味を持っています。何を判断基準に選んだらいいのでしょうか。(道内工務店・社長)
A・・・通称シックハウス新法の施行を機に、換気の話題はすっかり冷めていました。それが最近、少々盛り上がっているのは、やはり「省エネと空気質をどう両立するか」という問題意識が出発点にあると思います。
本紙およびこのQ&Aは、断熱・気密だけでなく換気の問題についても、20数年取り組んできました。その取材経験を元に今感じているのは、この問題は話が見えにくいということ。たとえば、熱交換換気→省エネ→偉いという連想ゲームになりかねません。
もう1つ気になることは、メーカーの洗脳に染まった人たちがいて、何を言っても耳に入らない場合があることです。それもこれも、話が見えにくいからでしょう。
この問題を「換気と省エネ」というテーマに置き換えて、思い込みや非難中傷でない意見をまとめたいと思います。
* *
いきなりですが、いくつかの問題点を拾っていきます。
第1に「熱交換換気を導入すると省エネルギーに貢献するかどうか」という点について議論があります。省エネに貢献するという説にたったとしても、省エネ達成はいくつかの条件をクリアする必要があります。
第2に省エネ(換気排熱を減らす)方法は換気熱回収(熱交換換気を含む)だけではありません。(是非は別として)換気量を減らすことでも省エネは達成されます。
第3に熱交換換気の役割は省エネだけでなく、給気加温にもあります。
第4に熱交換換気が北海道で少数派になったいちばんの理由は、主に掃除しないことで起きる換気不良・結露問題であり、熱交換効率の問題ではありませんでした。
第5に換気能力の低い熱交換換気システムは、室内湿度を高く保ち省エネを実現する場合があります。ただし、換気本来の空気清浄機能がないという皮肉な結果になりますが...。 (続く)
2011年01月25日号から
高性能住宅Q&A 743回 大雪で巻きだれがひどい
パラペットの工夫で解決も
Q・・・22年来、雪庇に悩んでいます。屋根融雪もつけましたが完全ではないし、今回の大雪はうっかり電源スイッチを入れ忘れて、あっという間に雪庇が。まわりの家と比べても大きいようです。何とかなりませんか。(札幌市・主婦)
A・・・札幌では、穏やかな年末年始のあと、1月6日から降り出した雪が1週間以上続きました。気温も真冬日で、まったく融けません。この結果、道路は大渋滞、どこの屋根も巻きだれということに。
今回は個別回答ではなく、ご質問の主旨を雪庇問題ととらえ、1月にあっという間にできた屋根の雪庇・巻きだれを観察してまとめました。
〈札幌の気象データ〉
雪:6日から13日まで8日間降りっぱなし
気温:5日から15日まで11日連続の真冬日。このうち大雪となった6日から13日は平均気温がマイナス5℃以下という厳しい寒さ。
風:15日に南南東の風に変わるまで、最大風速はすべて北西方向。
この間は、低温、一定の風向、降雪という3条件が揃っていたのです。
* *
雪庇とか巻きだれという言葉の意味を、ここでは次のように整理してみました。
【雪庇(せっぴ)】スキー場や近所の雪山にできる庇状のジャンプ台形状が屋根にできたもの。重さや降雪で徐々に庇部分が垂れ下がり、巻きだれ状態となる。
【巻きだれ】屋根雪のせり出しや雪庇により、屋根の先端部に雪が跳ね出し、垂れ下がって下に巻いた状態。
【せり出し】屋根の勾配によって雪が滑り、軒先に出てくる状態。多くの場合、先端部は凍っており、氷堤やツララがせり出すため危険。
* *
観察は札幌北西部で1月15日の日の出とともに開始し、午前9時ころに終了しました。三角屋根、Mこう配屋根、屋根材も雪止め型、落雪型とさまざまです。
〈巻きだれの方位〉
札幌の場合、冬は北西の風が多いため、雪庇・巻きだれは主に南東側にできます。街並み区画が45度傾いているため、多くの住宅は南東面に巻きだれが集中。北向きの家は北東面にもできます。南東向きで総2階建てだと、巻きだれは南東面のみ。それ以外だとやや複雑になる傾向があります。
〈できやすさ〉
ほとんどの屋根で巻きだれができていますが程度の差があること、軒の出がない、短い、パラペットの立ち上がりが低い、そして隣家と屋根が連続すると巻きだれが大きくなりやすく、風下側に下屋があるとさらに大きな巻きだれが下屋に発生します。
ただ、そうとばかり言えない例もあり、この問題を難しくしています。家並みや地形も影響するからです。
〈雪庇切りの方法〉
今回見て回った中で感じたことは、雪庇切りを設置すると有効だということの確認と、パラペット立ち上げで建築的に解決する方法があるということです。
これは発見でした(写真⑨)。
質問者のお宅はフラットルーフで南東側に水勾配がついており、南東側は巻きだれとツララ、雨だれが避けられないそうです。悪いことに南東に玄関と階段があるため、落雪があると危険とのこと。まわりの家と比べても巻きだれの量が多く、それはフラットルーフのせり出しなども関係していそうです。
2010年12月05日号から
高性能住宅Q&A 741回 断熱材が間に合わない 現場の回し方見直し
Q・・・北海道は大丈夫だそうですが、本州では断熱材が現場に入らず、工程が大幅に狂うという問題が起きています。一時的な工法変更などの対策を検討しています。(関東・工務店)
仕掛かり工事を積み上げない
A・・・夏くらいから本州では断熱材が品薄になり、かなり混乱しています。そのときにこのような質問を受けました。
大手ハウスメーカーはもちろん、建築現場は基幹建材の材質が変更になると少なからず影響を受けます。それをうまく乗り切るのも現場の力と言えるとは思いますが、難しいことも事実です。
今回は1つの考え方をご提供できればと思います。それは工程管理のことです。
たとえば壁のグラスウールが納期に間に合わないとします。グラスウールの施工ができないと着手できない工程は、壁下地です。
では壁下地が終わらないとできない工程は、壁・天井の仕上げ工程でしょうか。
そうすると、壁の断熱材がないことで、ほかの工事がどれだけ進んでも、けっきょく仕上げ工事の前に長い待ち時間が発生することになります。
うんと単純化して話を進めましたが、これは工程の依存関係の中からいちばんのキモを見つける作業、いわゆるクリティカルパス、またはクリティカルチェーンと呼ばれる工程管理の考え方です。
ここで大切なのは2つ。1つは、断熱材がないという「制約」の前の作業をどれだけ進めても、次には進めないという事実。もう1つは断熱材が来て工事が動き出したら、大工工事が間に合わないことでほかの工程に遅れが飛び火する可能性です。
【例】5つの現場に2人ずつ、合計10人の大工が現場に入っているとします。全10工程の工事の中で断熱材は第4工程で、2現場が第4工程の前で止まっています。次にやるべきことは?
止まった大工をほかの3現場に投入し、工事のスピードをあげること。そして断熱材が届いたら、納期が迫っている現場にすべての大工を投入すること。
壁下地工事という問題工程のまわりにたくさんのしかかり(仕掛)工事を積み上げても納期は短縮しません。「それぞれの現場がやれるとこまでやっておく」のではなく、来るべき大工不足に備えて、大工の配置変更でほかの現場を進めておく。これらの方法を検討する価値は、じゅうぶんにあると思います。また工法変更を余儀なくされたときにも生きると思います。
もちろん、大勢の大工を投入する現場では、作業効率は2人のときより落ちるかもしれません。しかし、それは小さなことです。部分最適に気をとられると、すべての工事の納期と品質管理という全体最適を見失いかねません。ポイントは、大工という労働力(資源)を現場単位でなく全体で優先順位を決めて活用するという点です。この場合、管理者の仕事は残り時間がどのくらいあるか、遅れがほかに飛び火して深刻化していないか、の観察と対処になります。詳しくは制約条件の理論(TOC)を検索してください。
* *
とはいえ、今回の納期待ちはたいへんで、納品を待てなかった例もあると聞いています。このQ&Aは1つの考え方として、読んでいただければ幸いです。
2010年10月25日号から
高性能住宅Q&A 739回 屋根の雨水が道路へ飛んだ
気候変動に備え雨に注意
Q...ゲリラ豪雨から数日したこの夏、お客さまから「屋根の雨水が道路まで飛んだ。こんなことになるとわかっていたら...」という苦情めいた電話が入りました。ハゼを立ち上げた無落雪の勾配屋根で、谷を走った水が飛んだようです。雪処理を優先した結果なのですが...。
A...そもそも建築としての欠陥とも思えませんがしかし。ここに取り上げたのは、2つの大切な視点が潜んでいるように思ったからです。1つは気候変化への対応、もう1つは非常識な消費者が増えていることへの対応です。
この夏だけとは限らない
今年の夏から学ぶことは、温暖化が進めば、さわやかな夏の北海道も雨が増えて湿度が上がる可能性があるということです。
関東以西が雪に対する備えがないのと同様に、北海道(道南をのぞく)は雨に対する備えがほとんどありません。住宅に限らずインフラもそうです。ちょっとの大雨ですぐに道路は冠水。家は床下浸水。でも、そんな大雨は年に一度あるかどうかだから、対策は不要だった。それがいままでの家づくり・まちづくりだったと思います。
しかし、今年のように大雨が多いと、やはり雨の知識と対策が必要です。ただ、本当に温暖化が進むかどうかは未定。そこで対策をしておく必要があるかどうかの見極めも大切になります。
コスト増招く消費者の変化
もう一つは、自分の主張が社会通念上、許容範囲を超えているかどうかを判断しない消費者が増えているように思われることと、その対応です。
いつの時代もクレーマーと呼ばれる消費者はいるし、彼らが増えていることを裏付ける資料があるわけでもありません。ただ、ゆすり・たかりの悪意はないけれどシロウトの立場を利用して「知らなかった」「説明がわからなかった」といったいい訳で苦情を申し立ててくるタイプは、工務店にとってはけっこうやっかいだと思います。
相手の言い分にどこまでつきあうかは微妙でしょう。こういう人たちが増えると、コストアップにつながります。そういう面で心の準備が必要かもしれません。
雨配慮のポイントは
話を気候変動に戻します。
北海道程度の雨をゲリラ豪雨と呼ぶかどうかはともかくとして、少なくても北海道にとっては道路が陥没し死者が出るほどの雨でした。
大雨について設計の段階で一定の配慮をする場合、ポイントになりそうな点を挙げてみました。
○屋根面では、水勾配の確保と雨水の流し方。
○屋根の雨水を受ける雨樋が北海道の屋根にはいまでもほとんどない。フラット系は軒先に雨が落ちないが、軒の出がないと外壁を汚すという別の問題がある。特に窓まわりの汚れは目立つ。
○雨樋があっても、大雨の時は雨樋を乗り越える(オーバーフローを起こす)というのが本州での常識。大雨は雨樋の対象ではない。
○大雨が対象外とは言え、特に隣地との関係については注意が必要。
○基礎を多少掘り下げて駐車場とする3層構造の木造アパートは、雨水処理に注意が必要。
現段階では、雨が風を伴うことはあまりありません。がしかし台風が来るようになると暴風雨も到来しそう。そうすると外壁の雨もりが問題になるかもしれません。
<写真>
雨対処の建築がこれから北海道で大切になるかも
2010年10月15日号から
高性能住宅Q&A 738回 基礎断熱した床下のカビ2
残念ながら決め手なし
一号あいてしまいました。基礎断熱した床下にカビを発見したという問い合わせ。カビはシックハウス原因の1つでもあり、健康な人にはほとんど害がない一方、呼吸器系の病気、例えばぜんそく患者などにはとても有害だというところまで説明しました。
* *
さて対策です。
床下に新鮮空気を送り込むという意味の換気は必要ありませんが、空気を動かす必要はあります。そのためには、床下の空気をファンで屋外へ排気することです。20~30/h程度の換気量が必要です。
なお、工事水の影響や工事中にたまった雨水の排出により、初年度は湿気が高くなりやすいので、除湿器を設置するのも一案です。また春先引き渡しの物件はコンクリート温度が上がっておらず、夏場に表面結露をおこしやすいので、基礎断熱を両側断熱にする方法もあります。地盤面の防湿、場合によっては防水ももちろん重要です。
意外と効くのは木炭や竹炭。カビが自然の摂理だとしたら、自然素材で対処するのがベターかもしれません。ただし、多量に土間床に敷き詰める必要があります。コストもバカになりませんし、調湿力に寿命があるともいわれています。
工学的な回答にならず、申し訳ありません。
今年はカビの被害がとても多かったといわれており、本格的な調査・研究が始まることを期待して、結びとします。
1回目は試読をご請求ください。伝言欄に「9月25日号希望」とお書き添えください。
http://www.iesu.co.jp/publication/newspaper/
2010年07月05日号から
高性能住宅Q&A 734回 高断熱住宅が6月に寒い
家電や室温設定か?
Q・・・断熱厚で壁が200㎜以上、熱損失係数(Q値)で1W以下の超高断熱住宅を引き渡し、冬の間は「本当に暖かい(寒くない)」と好評だったのですが、6月中旬に訪ねた際、『上旬まで暖房を入れる日があった』と聞いて驚きました。そんなものでしょうか。
A・・・この話は、最近ときどき耳にします。そして、以前から原因を調べていますが今ひとつわかりません。理由はわかりませんが、『5~6月に意外と寒い』という高断熱住宅が多いことは確かです。
以前はこの時期の話題と言えば、『3月なのにオーバーヒートした』という暑い住宅の話でした。こういう住宅はもちろん5月も当然のようにオーバーヒートします。しかし、朝晩は暖房を使っていたりするのです。ある1日に朝・暖房、お昼前後から冷房、夜は再び暖房という空調をするわけです。
原因は複合的で5つくらい
さて本題です。
考えられる理由は複合的ですが、1.日射遮へいがしっかりしている 2.建物に蓄熱層がある 3.室内に熱源がない 4.断熱性能が高い 5.室温がふだんから低めに設定されている―という要素が考えられます。
1.寒い家はオーバーヒートしない家であることが多いようです。日射の遮へいがしっかりしていたり、完全に真南を向いていて西面には窓が少なかったり。
日射遮へいはいろいろな方法があります。例えば窓が小さいこともその1つです。日射遮へいが効いていれば、太陽光や外気温度に左右されにくいことは確かです。
2.蓄熱量が大きく影響しているのではないかと昨年までは想像したのですが、決定的な理由ではないようです。ただ、基礎断熱などによってコンクリートの蓄熱量があれば、室温がコンクリート温度に引っ張られます。
3.室内に熱源がないということは、実は大きな原因になっているように思います。熱源とは暖房だけでなく、家電製品、つまりテレビも冷蔵庫もパソコンも、すべて熱源になります。内外温度差が小さいこの時期は、300Wクラスの家電が動いているだけで暖房と同等の効果があります。概算では室温を1・5℃程度引き上げるチカラがありますから、テレビがついているかどうかでだいぶ違うでしょう。
4.そもそも断熱性能が高いことが、夏冬問わずに屋外の気温に左右されにくい室内をつくるワケですから、この時期特有のピーカンの晴天で外気温が低いときなどは、日射遮へいがほどよく効いていれば、屋根の照り返しの影響もあまり受けずに室内が低温で推移することになります。
5.室温を高めに設定している人は、ちょっと寒いだけで迷わず暖房onなのに対し、20℃くらいの設定のかたは、肌寒くなる18℃くらいまでガマンしてしまうという面もあるようです。
肌寒い感覚は17~21℃、おおむね18~20℃でしょうから、ふだんの暖房温度が密接にかかわってくるわけです。
お客さまの中には、「欠陥(断熱欠損)じゃないか?」というニュアンスをにおわせる方もいます。
そうではないと説明するのは難しいですよね、きっと。まずは「同じく寒い思いをされている人けっこういるんですよ」というあたりから入るのがいいでしょうか。
対策は「自分だけではない安心感」。すなわち『遠慮せずに暖房しよう』と心を解放して差し上げることかもしれません。
2010年06月25日号から
高性能住宅 Q&A 733回 黒アリが出たときどうするか
状況説明より、共感と誠実な対応
今年もアリの季節がやってきた。6月に入って2週間あまりでアリの相談が立て続けに6件も編集部によせられている。不快な虫・アリ。ユーザーの嫌悪感と建築業者の誤解がクレームを招く。アリについてまとめた。
誤解されているアリ
住居に侵入するアリは、北海道では6月ころから活動が活発になり、8月ごろ羽アリになって飛び立つ。ほとんどはトビイロケアリと呼ばれるどこにでもいるアリだそうだ。ここで勉強するのはシロアリではなく、黒アリのほうです。
古い木造住宅に出てくるなら、さほど問題ない。問題になるのは...。
1.新築したばかりのころ。
2.新築後数年してから。
3.リフォーム後すぐに。
多くの場合は室内に出てきて気がつく。「気持ちが悪い」「アリが出るような(ひどい)家なのか」。
アリが出ただけで最近の新築・リフォームはクレームになりかねない。それが第一の問題。
第二の問題は、アリが基礎断熱材を巣としてしまう事。
第三は、「アリが出たら木材が腐っていると疑え」を超えて、食害があったと勘違いしてしまうこと。
基礎断熱材に巣を作ったとしても、断熱性能の低下は心配しなくていいと思う、とある専門家は語っています。
アリ退治は、ハエ・蚊用の市販の殺虫剤(エアゾール)でじゅうぶんですし、土から出てくるアリを退治するのもホームセンターに売っているアリ退治でじゅうぶん。シロアリ用薬剤を使えばより強力に効くと勘違いしている人もいるそうですが、それは間違いです。
4つのケースを見る
その1
リフォームしてすぐにアリが出た。
基礎断熱材を巣にした被害である可能性は低いでしょう。この場合は「不快だ」というクレームです。誠実に対応することが解決策です。
新築で同じクレームをもらったある住宅会社は、アリを採取して保健所に持ち込み、調べてもらった。そして「シロアリのような木材をダメにする食害はない」という回答をもってユーザー宅を訪問。この対応で信頼を回復したそうです。
その2
2度も基礎断熱材をやられている。
断熱改修のおりに基礎断熱材に巣を作られ、対策を打ったつもりだったが、またやられたという例。
基礎断熱がアリにやられても、一般住宅ではなかなか気がつかないと思います。また、敷地の条件などもあるでしょうから、『こうすれば出て、こう対策したら出ない』と言いにくいのです。
基礎断熱材はその固さなどからアリのお気に入りらしく、蟻道をつくったり巣にしたりする傾向があります。
アリはすき間から侵入します。なので基礎の打ち込みに型枠代わりに使う場合はいいのですが、あと貼りのときは布基礎としっかり密着させてください。少しでもすき間があると、この例のように出てきます。
打ち込み後は、できればメッシュを伏せてモルタルを下塗りします。こうすれば小口などから侵入される心配がかなり低下します。
その3
外壁リフォームでサイディングをはがしたところ、透湿・防水シートに穴が開いて、そこにアリがいた。
もっとも新しく今年2月25日号のQ&Aに掲載した例です。詳しくはバックナンバーを見ていただくか編集部へお問い合わせください。透湿・防水シートにアリが穴を開けた疑いは、アリは穴あけはあまり得意ではなくかなり低いそうです。
対処としては、アリが這い出てきた部分に市販されているハエ退治用などの殺虫剤をスプレーして(シロアリ駆除剤ではありません)、テープで穴をふさぐだけでじゅうぶん。
その4
リフォーム時に腐った木材に食害が見られた。
この場合も難しいです。腐った木材は基礎断熱材と同じく巣にしたい固さのようで、穴を開けて巣にすることがあることは確かなようです。ただ、シロアリのように健康な木材をダメにするのではありません。つまり、順序として腐った木材があったからアリがきたのであって、アリが木材をダメにしたのではありません。
札幌市保健所に取材すると、同じ事を説明されます。またホームページには食害の心配はないと書かれています。
終わりに-クレームになりやすい
今回、施主、賃貸住宅のオーナー、研究者、駆除業者、そして建築会社といろいろな立場の方の話を聞く機会がありました。この中で一番深刻だと感じたのは、アリが出るとクレームになりやすい、という点です。
「アリが出た」という施主の訴えに対して、『そりゃ虫が出ることもありますヨ』的対応をすると、本当にクレーム化しかねません。まず、ユーザーは虫が大嫌い、という気持ちを理解した上で、先の例のように誠実に対応することが求められているようです。要するに、技術的に解明することを優先すると、ときに感情のもつれが大きくなるということのようです。
札幌市保健所の該当ページ
http://www.city.sapporo.jp/hokenjo/f3seikatu/f80mushi/
2010年06月05日号から
高性能住宅Q&A 731回 在来の気密と先張り簡略化3
安全性考え後施工も

差し回りの先張りについては、前々回(4月25日号)で紹介しましたが、旭川など道北地域では、建て方の途中で2階の梁を落とし込む時に先張りシートを施工するのではなく、建て方が終わってから2階の床を張る前に先張りシートを後施工する工務店もよく見かけます。
先張りシートを後張りする理由は、大工の安全確保と先張りシートのちぎれ防止。梁の落とし込み時にシートを先張りする一般的な方法だと、風などで胴差しの上にシートがかぶさってしまった場合、大工がその上を歩いて足を滑らせてしまう危険性があります。特に雨や雪が降った時には、かなり足もとに注意する必要があると話す工務店さんもいるほど。
また、海沿いの風が強い地域では、風であおられた先張りシートがちぎれてしまったり、最悪の場合、例え0・2mm厚のシートを使っていたとしても、そのままどこかに飛ばされてしまうこともあるようです。
施工は、建て方終了後、軸組屋外側の構造用合板を張って窓も入ってから。2階の床下地合板を張る直前に、高さ50cm程度に切った防湿・気密シートを胴差回りにタッカーで留め、梁が当たる部分はY字に切込みを入れて落とし込み、梁の回りをテープ処理。
梁との取り合いは、テープ処理だけだと将来的にテープが剥がれてくる心配もあるので、テープの上から細かくタッカーを打ったり、合板の切れ端など端材を打ち付けたりして押さえます。
また、先張りシートのジョイント部分は柱などの木下地上で30cm程度の重ねを取ります。
通常の先張りと性能は変わらず
この方法で施工している工務店の1社は、一般的な先張りと比べて気密性能の差はまったくないといい、気密測定で相当隙間面積=C値0.5cm2/m2を間違いなく切ることが可能とのこと。
四角いプランで40坪程度の住宅であれば、大工は脚立を使って1~2時間程度で張り終えるので、慣れてしまえば一般的な先張りより施工もラクになります。
2010年05月15日号から
高性能住宅Q&A 730回 在来の気密と先張り簡略化
基礎精度upが重要
土台は意外に気密悪化の盲点
前回(4月25日)は胴差しまわりの先張りについて、「梁との接合部を避けて後張りするより、先張りした方が良い」ことを紹介しました。今回は土台まわりについて。
※第1回を見てみたい方は、「4月25日号も希望」と書き添えた上で試読紙をご請求ください。
省略されることも多い胴差しまわりに比べて、土台まわりは先張りシートが施工されているケースが多いように思います。そういう意味ではあまり問題がないのですが、基礎断熱した住宅で気密性能が思ったほど上がらない場合、原因の多くは土台周りにあるとも言われます。なぜでしょうか? そしてどうしたらよいのでしょうか。
基礎天端と土台の気密化ですが、現在、大きく分けて3通りの手法があります。1.基礎打設時に布基礎と外側断熱材の間に防湿・気密シートを挟んでおき、打設後シートを立ち上げて基礎天端に被せその上に土台を乗せてさらにシートを立ち上げ、壁のシートと連続させる2.基礎打設後基礎天端にスポンジまたはゴム状の気密パッキンと防湿・気密シートが一体になった気密部材を敷き、その上に土台を乗せたあとシートを壁のシートと連続させる3. 1や2と同様の方法を使うが、防湿・気密シートではなく透湿・防水シートを使う。
要注意のポイントは、使うシートによって土台の屋外側を回すか室内側かが違うという点です。シートを土台の屋外側から土台上へ立ち上げるときは、必ず透湿・防水シートを使います。防湿・気密シートを土台の屋外側に張ると、土台との間で結露する可能性があるからです。
問題は、気密性能が意外に上がらない原因です。
基礎天端のレベルはプラスマイナス2~3mmの高い精度が必要です。床断熱の場合は多少の不陸をスペーサーで調節できますが、基礎断熱の場合はそれはできません。またパッキン材は大きな不陸を調節するほどの能力はありません。パッキン材はあくまでもヘアラインのような細い隙間を埋めるものと考えて下さい。
また、パッキン材はスポンジ状と発泡ゴム状では特徴が異なるので、その点を十分理解して使わなければなりません。スポンジ状のパッキン材は厚さ10mmが主流、20mm厚もあります。5分の1に圧縮して使うのが原則ですが、腰が弱いためすぐ圧縮できる半面、働き幅が狭すぎる場合もあります。一方、発泡ゴム状のパッキン材はパイプを二本寝かせたような中空構造の製品が多く、腰が強く弾力性があるため働き幅は広いのですが、アンカーをあまり締めすぎるとパッキンの反発力で土台がねじれる場合もあります。
基礎のレベル出しをどうするかは各社が頭を悩ましているところですが、1つはモルタル均しを行う前に高い部分を「削る」という手法、もう1つはセルフレベリングモルタルを使う方法です。高低差をパッキンで調整して、発生したすき間をウレタンで埋めるという方法もありますが、あまり新築に使うべきではないと思います。
2010年03月15日号から
高性能住宅Q&A 第728回
床下あると暖房費増える?
Q・・・気になり出したことがあります。基礎断熱した床下に、温水暖房配管を被覆なしで露出させていますが、こうすると暖房費が増えるのではないでしょうか?
A・・・北海道内では、基礎断熱した床下のコンクリート温度を保つことで夏型結露・カビを防ぐ方法として、温水暖房配管を被覆なしで床下に露出させるケースがあります。保温被覆材がないので配管からの放熱が期待できるワケですが、ラジエータ状に放熱を促進するものではありません。もともとその程度の放熱量でいいという考え方にたっています。ですから、床下暖房とは違います。
床下はそれなりの気積があります。仮に高さ50cm、建坪60m2としたら、30m3の気積になります。
床下のほか、天井ふところをなくして2階床をさらし天井とし、さらに三角屋根の小屋裏も利用したとしたら、床断熱、天井断熱、天井ふところのある住宅と比べ、室内はどのくらい広くなるでしょうか。
延床面積に変わりがない天井高1・4m以下でも、部屋であることに変わりはありません。暖房空間内であれば暖房費もかかる計算になります。つまり、暖房空間は床面積ではなく室内の容積で見る必要があります。
先の例で床下50cm、天井ふところ30cm、小屋裏5寸勾配として、その合計はおよそ90m3。これは天井高2・4mの部屋に換算すると38m2分に相当します。つまり、延床面積は総2階の120m2でも、実は160m2近い大きな家なのです。
90m3の内訳を見てみると、約半分が小屋裏です。

2010年02月25日号から
高性能住宅Q&A 外壁をはがしたら黒アリ
殺虫剤散布でじゅうぶん
Q・・・外壁リフォームを受注し、サイディングをはがしたところ、透湿・防水シートに穴が開いて、そこにアリがいたのです。どうしたらいいですか? シロアリ駆除剤を散布するとかは考えついたのですが、健康問題もありますし。アリがシートに穴を開けたのでしょうか?
A・・・物件は札幌圏で、築15年の家だそうです。質問者は木造の現場管理者として、木材の腐り具合、雨水浸入の形跡、透湿・防水シートの強度については確認を終えたそうで、シートには強度低下は見られませんでした。また木材腐朽については、出窓との取り合い部に胴縁材の腐れが見られるほかは問題ないということでした。
そこで編集部は、発見された「アリ」について、専門家である㈱青山プリザーブに取材してみました。
同社では、「現場を見ないことには軽々しく結論は出せない」という前提の上で、次のような見方をしています。
▽シロアリではないという現場管理者の見立てはまず間違っていない。
▽普通のアリなら、小さなトビイロケアリ以外は大きな巣を作らない。
▽ほんとうは殺虫剤もいらないくらい。シロアリ駆除剤は必要ないし、使ってはいけない。
アリが出てくると、「アリが木を腐らせた」とか「ほかにも腐っているところがあるはず」といった不安がよぎると思います。しかし、シロアリ以外の普通のアリは、木をダメにすることはありませんし、ほかの部位が腐っている証しでもありません。
ただ、アリは湿ったところが好きなので、アリが出てきた場所が濡れているかも、という推測はできます。それとて、最近の調査ではカラカラに乾燥した室内の部位から出てくることもあるので、断定できないのです。
要するに、普通のアリには家を腐らせるチカラも、シートを破るチカラもないのです。こういう虫を「不快虫」と言いますが、不快なだけで人間への害は確認されていません。
* *
透湿・防水シートにアリが穴を開けた疑いはかなり低いのですが、もし開けたとしたらシートが弱っているのでしょう。アリは穴あけはあまり得意ではありません。
対処としては、アリが這い出てきた部分に市販されているハエ退治用などの殺虫剤をスプレーして(シロアリ駆除剤ではありません)、テープで穴をふさぐだけでじゅうぶん。
2009年09月15日号から
暖房設備容量の計算2 電気ボイラー・森永エンジニアリング
高性能住宅Q&A
A...電気暖房が増えるにつれ、暖房設備容量を把握する必要が出てきました。背景には灯油暖房とは異なり、容量に応じて基本料金がかかるという点があります。つまり適切なヒーター容量の電気ボイラーを設置しなければ無駄な電気料金を支払うことになってしまいます。
ここでは初歩的な暖房設備容量の設定方法をそれぞれ発売元に説明してもらいました。
第2回は電気ボイラーについて森永エンジニアリング(株)に聞きました。電気ボイラーは北海道電力(株)が設定する融雪用電力(ホットタイム22ロング)を利用して暖房します。本州の方からの問い合わせも多いのですが、22時間暖房で、一般的には通電カットとなる2時間を15分ずつに断続してON/OFFすること、その時間帯は冬場の電力負荷のピーク時間帯とすることで電力料金が割安になる料金契約が前提になっています。
パネルの選定などは灯油と同じ
まず、温水セントラル暖房を行うに当たり、灯油熱源も電気熱源も違いはありません。熱負荷計算に基づいて設計を行います。当然、放熱器の選定・枚数も同じです。
融雪用電力の場合、1日2時間の通電カットになりますが、そのことはボイラー容量や放熱器選定に影響を与えません。それは、建物の蓄熱効果や内部取得熱、当然のことながら住宅の断熱性能の高さがあるからです。
エルパンナはもともと最大9.6kWのヒーターが内蔵されていますが、建物の暖房計算結果から適切なヒーター容量に調整して出荷しています。
現在、ボイラーの容量設定については、暖房負荷の7割から9割、平均で8割というチョイスが多いと思います。つまり、暖房負荷が5kWのとき、ボイラー容量は4kWが平均ということになります。
このとき、当社はΔtを室温22℃で見ていますので、札幌では31(deg)となります。
ただし、市街地では立地によって日射の期待ができなかったり、北斜面などのケースもあり、そういう場合は多少の安全率をかけていくことになります。
暖房負荷に対して100%のボイラー容量が必要ない理由は、24時間連続暖房していることと、建物の蓄熱効果です。それが10%程度なのか、30%減らしていいのかは、ケースバイケースで一概に言えない場合が多いのです。
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電気ボイラーの容量を設定するための裏付け資料としてコンピューターによる非定常シミュレーションで検証をおこなっています。室温は外気温の変化や日射にどのくらい影響されるか、またそのことがボイラーの容量設定にどういった影響を及ぼすかを見るためです。
シミュレーションによると、例えば外気温の変化が急激であっても、その影響はなだらかになります。理由は建物に熱容量があるから。また日中の日射の影響は夜間も続くことがわかりました。
ボイラー容量については、札幌の最近のように最低気温がマイナス12~13℃程度で、それも年に1~2日という条件では、暖房負荷の60~70%でよいことになります。
暖房負荷:熱損失係数×床面積×設定内外温度差(Δt)
(写真...森永エンジニアリングのパネルヒーターと電気ボイラー)
2009年07月05日号から
換気低下5つの課題7/まとめ
高性能住宅Q&A
掃除せずに放置していたら換気量が低下したという築10数年の住宅を目の当たりにして、住宅会社はどのような対応ができるか。今回は最終回・まとめです。
住宅用セントラル換気導入の歴史を見ると、始まりは「結露の解消」だったようです。
20数年前、当時は在来木造よりもはるかに気密性が高かったツーバイフォー住宅では、暖かいけれども冬場の結露は深刻でした。原因は断熱性の低いアルミサッシ、開放型のストーブ、換気不足といった複合だったのですが、セントラル換気を導入すると見事に結露が解消したといいます。
その威力に感心して、セントラル換気の導入が徐々に始まります。しかし、住宅会社には「結露を防止するための技術」つまりデメリットを解消するいわば"負の技術"と見る意識が残っていて、それを加速させたのが換気設備設置の義務化(2003年)だったのではないでしょうか。
一方で「換気は人と建物の健康を守るプラス技術」と考えている住宅会社も少なくありません。
換気はエンドユーザーの指名商品ではなく、多くの場合は住宅会社側の標準仕様商品です。ですから住宅会社側が換気をどう見ているかによって設備選択が変わってくるように思います。
今回、10年以上経った住宅の換気を取り上げたのは、「空気環境をどうするかは、住宅会社次第だ」というエンドユーザーの声なき声を紹介したかったからです。
取り組み方はいろいろあると思います。ただ、10数年後を考えなければいけないのは、本当は換気メーカーではなく住宅会社である、ということなのです。取材を通じて感じた取り組み方法を紹介します。
1.良いものを選ぶ:換気能力に不安がなく、耐久性についても定評のあるシステムを設置する。しかし、良いものは得てして安くはない。
2.性能も価格も納得できるものを選ぶ:換気能力に不安がなく、掃除しやすさにも配慮し、価格も納得の範囲内。しかしこういう製品は得てして耐久性が犠牲になっている場合がある。それをフォローするのは住宅会社側の「仕事づくり」でもある(連載⑤に掲載)。
3.法をクリアする最低限の設備:カタログに「最低限」とは書かれていなくても、換気性能より手軽さと価格を最優先した商品も市場に出ている。発売元の資料に沿ってひと通りの説明をすると同時に、交換時期にフォローする。
換気は住宅会社が選ぶ機能重視の設備です。場合によっては住み手の健康障害を引き起こすことがある一方、換気不良でもクレームにならないケースも多いでしょう。換気が問題になるのは、やはり結露という現象が現れたときかもしれません。(終)
(図...換気システムは人の呼吸と同じ)
2009年06月15日号から
換気低下5つの課題6/機能と価格をしっかり選ぶ
高性能住宅Q&A
掃除せずに放置していたら換気量が低下したという築10数年の住宅を目の当たりにして、住宅会社はどのような対応ができるか。
1号お休みして今回は、5つの課題をそのまま換気メーカーなどにぶつけてみました。
回答いただいたのは、日本に住宅用セントラル換気システムを紹介し、その普及をリードしてきた輸入・発売元などで構成する日本輸入換気システム連盟の会員会社です。
1.掃除をすることで換気量はどのくらい回復するのか。
A1.当社機器には定風量機能(差圧センサー)を搭載しており、圧力損失が高くなった場合はファンの回転数があがります。一定期間圧力損失があがると、フィルター交換サインが出ます。(日本スティーベル)
A2.まず、換気量の測定は、一般には5~10%程度の増減は誤差の範囲です。その理由は、1.電圧変動(±5~10%)2.数値の読み違い 3.外部風速による影響などです。
スウェーデンでは、風量低下の研究はありました。それはファンの羽根の汚れによる能力低下の推移でした。ファンの羽根の汚れや、排気バルブ裏側の綿ぼこりを除去すれば風量低下は5%も起きないと考えます。ダクト内の汚れで風量が低下することは、弊社の過去28年間の経験でも問題は出ていません。
ダクトの詰まりなどは、50φダクトやフィルター・防虫網などによるものがほとんどで、このようなものは使わなければ良いのです。過去、スウェーデンやカナダで直径75φ以下のダクトの検証が行われましたが、換気用としては不適とされています。日本で建築会社の要望だけに応じた安易な妥協で50φダクトを商品化するなどは自殺行為でしょう。(ディックス)
2.換気量が落ちていいのかどうか。
A1.それはダメだといえます。ただ、換気量が減ってもすぐに生活に支障がでたり、健康に被害を及ぼすわけではありません。そこを考えると、必要換気量の定義を考え直す議論になっていく可能性はあると思います。ただこの時、どこまで減らせるかというような議論になってはいけません。(ガデリウス)
A2.施主が換気を理解していないことが問題です。寒いからと換気量を自ら落とす(止める)ケースの方が、メンテナンスを怠るよりも深刻。(ジェイベック)
A3.そもそも換気装置の設置時に0.5回が確保されていたのかの確認が必要です。測定方法が正しかったかどうかの検証とともに、第三者があとから測定する場合はとくに注意が必要です。(ディックス)
3.住み手に年に1、2度は掃除してもらう方法はないのか。
A1.弊社ではカタログや取扱説明書に明記しているほか、ユーザー登録を勧めており、登録いただければ案内できるようにしています。また、フィルター清掃タイプではコントロールボックスに清掃時期お知らせランプがつくようにしています。(日本住環境)
A2.教育の問題でもあります。小・中学校から住宅とその維持など住生活についての教育プログラムを導入すべきです。(ガデリウス)
4.換気メーカーは10年後を考えて商品を提供しているか。
A1.当社は住宅会社に部品を供給する会社で、自動車でいえばトヨタが住宅会社であれば我々は部品メーカーです。住宅会社は幅広い視野をもった上で真剣に住宅の耐久性を考えること、ときに部品メーカーの助言に耳を傾けることが必要と思います。(日本スティーベル)
A2.過去30数年間建築業界で仕事をしてきましたが、この間に建築行政は何の進歩もないのではないか?と感じます。つまり、建築物の寿命がいまだに短く、建材や窓サッシなどの強度・耐久年数もむしろ短くなってきている例を多く見かけます。建築確認申請の一部である構造計算疑惑や樹脂サッシ防火認定の事件を見ても分かるとおり、建築行政の無責任さは目を覆うばかりです。製造実務や施工の実務の経験がない学識経験者や、責任をとらない役人機構が「書類での認定・審査」で手数料稼ぎをしている結果だと思います。将来を考えるなら、建築施工中や完成時に審査を「少なくとも抜き打ち的に数回は行うカナダ方式」のようなシステムをまずは実施すべきでしょう。「設計・施工・メンテナンスの民間実務経験者」を検査官主体としてです。少なくとも換気装置は現在の建物よりも長期実用に耐えると思いますから、先に行政機構を革新すべきでしょう。(ディックス)
A3.住宅会社は換気を天井裏に隠ぺい設置するのを止めるべきです。見えない→面倒→忘れる→壊れても気が付かないの悪循環です。(ジェイベック)
5.換気量はどのくらい落ちるものなのか。
A1.条件によってぜんぜん異なります。弊社でもダクト内の実態調査をしたことがありますが、100ミリ径では汚れている割に換気量はほとんど変わらない現実がありました。(日本住環境)
2009年05月25日号から
換気低下5つの課題5/耐久性が重要なワケ
高性能住宅Q&A
掃除せずに放置していたら換気量が低下したという築10数年の住宅を目の当たりにして、住宅会社はどのような対応ができるか。第1回~4回は掃除せずに1、2年放置するとどのくらい換気量が低下するか、落ちた換気量は回復するのか、住み手に年に1、2度は掃除してもらう方法はないか、などについてみてきました。
1号お休みして今回は5つの課題の最後、換気メーカーは10年後を考えて商品を提供しているか、という点について考えてみたいと思います。
多少、背景を説明したいと思います。換気システムが普及しはじめた当初、「A製品は風量を確保できるがB製品は風量が少ない」ということがありました。なぜ風量が少ないことがわかったかといえば、北海道のような寒冷地で住宅の気密性が高いと、換気不足で結露が起きるからです。
その後、換気設備の設置が義務化され、ひどい換気不足が起きる例は少なくなりました。それは義務化のよい面だと思います。ところが義務化によって換気を選ぶ際のポイントは性能から価格に変わってしまいました。"基準をクリアできる性能でいかに安いか"。これが命題となったため、多くの換気メーカーは「性能クリア、かつ価格引き下げ」が開発目標になってしまったのです。
もちろん技術革新によって改良が実現した部分もあるとされています。省電力技術などです。しかし、もともとハイテクではない換気システムにとって、技術革新はそうないといわれています。ではコストダウンはどう実現したか。耐久性は犠牲にされていないか。そうだとしたら住宅会社はどう対応したらよいか。
また、機械そのものの耐久性が高くても交換部品がなくなることで、10数年後に事実上、使えない換気になりかねないケースもあります。
(図...換気の課題~解決への一例)
前書きが長くなったのは意味があります。というのは、「耐久性が犠牲になっている可能性」や「交換部品がないため10数年後には使えない換気になりかねない」といったことを、住宅会社側が知っておくべきだと思ったからです。
受注競争が激しい中で、換気の原価を引き上げることは難しいかもしれません。しかし、寒冷地において換気はクレームと密接にかかわる大切な機能です。
換気が悪くなると結露するのは、高気密住宅の宿命です。だから、住宅販売側として換気性能が長期にわたって維持されていることが大切なのだと思います。
20数年前からA社の機械換気を標準で装備している工務店社長に何となく「どうしてずっと標準装備しているのか、なぜA社なのか?」と尋ねたことがあります。その答えは、「確実に換気量が確保される、施工後にクレームで呼びつけられない」でした。
定期点検の実施によって、こういう問題は避けられるかもしれません。その点検を実施するための原資(人件費)は、点検によるリフォームの掘り起こしによって出てくるかもしれません。この機会に検討してみてください。
次回はこれまで見てきた5つの課題をそのまま換気メーカーなどにぶつけてみました。その答えです。
2009年05月05日号から
換気低下5つの課題4/ご主人に説明する
高性能住宅Q&A
掃除せずに放置していたら換気量が低下したという築10数年の住宅を目の当たりにして、住宅会社はどのような対応ができるか。第1回は掃除せずに1、2年放置するとどのくらい換気量が低下するか、2回目は落ちた換気量は回復するのか、3回目の前回は換気量が落ちていいのかどうかという点をまとめました。
今回は、住み手に年に1、2度は掃除してもらう方法はないか、です。せめて1年に1回でもやってもらえばゴミつまりをかなり防げるかもしれません。
この問題はシステムの性能ではないけれど重要な機能だと思います。
換気システムの本体はどこに設置されていますか? 壁の上部、または天井裏というケースが多いと思います。給気レジスターや排気グリルは壁の上部ですね。いずれも女性では手が届きにくい、作業がしにくい場所にあります。換気システムの掃除は男性の仕事であると想像したほうが良さそうです。
そのつもりで、この件は奥さまではなくご主人に説明することがポイントになります。ご主人に話す際に数値を示して『掃除しないと*%換気量が減ります』という説明をしておくと、男心に響きやすいと思います。
本体ファンの掃除しやすさは商品によって異なるので、住宅会社側がシステム選択時に検討しておくべきポイントです。掃除しやすさはオーナーが実際にちゃんと掃除してくれるかどうかに影響するはずです。
(写真...掃除しやすさは重要な性能)
2009年04月25日号から
換気低下5つの課題3/数年後も風量維持
高性能住宅Q&A
掃除せずに放置していたら換気量が低下したという築10数年の住宅を目の当たりにして、住宅会社はどのような対応ができるか。第1回は掃除せずに1、2年放置するとどのくらい換気量が低下するか、2回目の前回は落ちた換気量は回復するのかをまとめました。
今回は、換気量が落ちていいのかどうかという点から。ダメだというのは正しい答えですが、住み手に健康問題がなければいいのか、それともそうではないのか。
換気量が落ちていいかどうか、という議論の前に、住み手のなかには換気の運転スイッチを止めてしまい、その状態で生活して特に不自由を感じていない実態が一部にあります。室内空気の汚染は人の健康にとって大きな問題ですが、一方で多くの人にとっては特に問題がないことも事実です。
思い出してください。シックハウスが問題になったとき、体調が悪化するのは気のせいだとか、家とは関係ないとかいう意見もありました。それは、個人差なく健康被害が出る中毒症とは違い、同じ空気を吸っても体調が崩れる人もいれば平気な人もいて、むしろ平気な人のほうが多いからです(もちろん将来のことはわかりませんが)。

(図...換気回数の相違によるホルムアルデヒド濃度(出典:第8回北海道住宅新聞 寒地住宅学校テキスト集から北見工大坂本弘志教授(当時)の講演資料)改正建築基準法施行前の測定だが、換気量が変わると空気汚染物質がどのくらい増減するかがよくわかる)
法律はどうなっているでしょうか。
建築基準法では機械換気の設置を義務化しており、換気回数は一般には0.5回/h以上です。[何年間、この換気量を維持しろ]と書かれてはいませんが、[そのうち換気量を減らしてもいい]とも書かれていません。つまり建築後について何も書かれていないのです。
法律の趣旨はシックハウスを防ぐことであり、その目安は厚生労働省が示している指針値ですから、ホルムアルデヒドが安定して0.08ppmを下回るなら、換気は多少減っていいとも言えます。多少というのは、建材から放散されるホルムアルデヒドなどは収まっても、人がいることで発生する炭酸ガスなどや、カビ・ダニの問題もあるからです。
㈲北欧住宅研究所・川本清司所長は「換気回数が0.4回/hになると、夫婦2人の寝室などでは炭酸ガス濃度が1000ppmを超えかねない。1000ppmを超えるとあまりよくないのは自分の経験からも言える。ひと1人に必要な空気は、動いているときに30m3/h、静止しているときに20m3/hというのはじつに正しい」としています。
『換気はシックハウス対策のためだけにおこなうのではない』
このことをいま一度、思い出す必要がありそうです。ただしホンネベースでは、数年たったら多少減らしてもいいという面もあります。
2009年04月15日号から
換気低下5つの課題2/掃除で換気量回復
高性能住宅Q&A
掃除せずに放置していたら換気量が低下したという築10数年の住宅を目の当たりにして、住宅会社はどのような対応ができるか。前回は掃除せずに1、2年放置するとどのくらい換気量が低下するかをまとめました。
それによると、禁煙4人家族で1年に10~13%、2年で15~18%低下するというのが(有)北欧住宅研究所・川本清司所長の所見でした。
では落ちた換気量は回復するのか。
東北大学の吉野博教授を中心とする研究グループは、換気システムの清掃前と後でどのくらい換気量が違うかを測定し、発表しています。
それによると、熱交換換気、第三種換気、個別換気の12戸の住宅のうち、7戸が掃除によって風量が回復しました。このほか3戸は風量が変わりませんでしたが、そのうち1戸は定期的に掃除していた、1戸はダクト設計に問題があり掃除では回復しそうにない、1戸は外排気フードに問題がありそう―という結果で、掃除によっておおむね換気量は回復すると言えそうです。
前出川本氏は竣工時の換気量がわかっている第三種換気について、ファン本体、給気レジスターのフィルター、排気グリル、場合によっては外排気フード、そしてダクトは排気グリルから最初の曲がりまで手を突っ込んでゴミをかき出すことで、換気量はほぼ竣工時と同じまで回復すると言います。
ただし、ダクトについては要注意です。
まず、ダクト径が小さいと汚れの付着による換気量低下への影響が大きくなります。川本氏は「できれば100ミリφを」と主張しています。
もう1点は、ダクト掃除を行うときの注意点です。第三種換気の場合は排気グリルから最初の曲がりまで手を突っ込んで掃除することでいいようですが、第一種換気の給気側はそうもいかない場合があるでしょう。
北海学園大学の佐々木博明教授を中心とする研究グループは「住宅用換気システムのメンテナンスの研究」と題する一連の研究の中で、フレキダクトは突起部に付着したゴミが成長するため、管の内面が平滑なスパイラル管の普及が望まれるとしています。
施工性と同時に掃除のことも考えると、配管径はできるだけ太くした上でしっかりとした施工により結束部分の脱落などがないようにし、手を突っ込んで掃除することを事前に想定しておくことがベターと言えそうです。
(写真...竣工後およそ3年を経過した住宅のスパイラルダクト内の汚れ。すぐの90度曲がりにフリース状のゴミがついているが、部分的には管材の内表面も見える。スパイラル管は汚れがつきにくい)
2009年04月05日号から
換気低下5つの課題1/1年で10%程度低下
高性能住宅Q&A
Q...築10年近く経過した住宅の点検におじゃまして、換気不良に気がつきました。お客さまは自宅の空気に慣れているので何も感じないようですが、においがこもり、測定するまでもなく換気不足は明らかでした。
お客さまが掃除をしてくれたらここまでひどくならなかったと思うのですが、そうでなくてもある程度の換気が確保される住宅であってほしいという気持ちもあります。
第三種のセントラル換気でこうですから...。
A...ご質問というより、課題をいただいた気分で、いろいろ調べてみました。
以前から、築年数が経つと換気量が落ちるというのは経験的にわかっていたことですし、実際に穴が詰まるほどのゴミが付着していて、掃除したらかなり回復した、という例もあります。しかし、そこで、掃除をすることでどのくらい回復するのか。これが第一の課題です。
第二に、換気量が落ちていいのかどうかという点です。ダメだというのは正しい答えですが、住み手に健康問題がなければいいのか、それともそうではないのか。
第三に、住み手に年に1、2度は掃除してもらう方法はないのか。せめて1年に1回でもやってもらえばゴミつまりをかなり防げるかもしれません。
第四に換気メーカーは10年後を考えて商品を提供しているか、という点です。実際にはローコスト要請が強く、耐久性や掃除しやすさを犠牲にせざるを得ないとしたら、住宅会社側はどうすべきでしょうか。
そもそも、換気量はどのくらい落ちるものなのか。公式はないにしても、一例をおさえておく必要はありそうです。これが第五の課題。
(写真...排気グリルの裏側に付着したフリースのような汚れ。これがダクト内の表面にも付着している)
* *
札幌でセントラル換気システムの設計などコンサルティング活動を行っている(有)北欧住宅研究所・川本清司所長は、これまでの調査からだいたい次のような傾向があると言います。
4人家族で1年掃除しないと、10~13%、2年掃除しないと15~18%程度、換気量が低下する。
2人家族だと1年掃除なしで5%程度の低下。
以上は禁煙家庭の場合。喫煙者がいる場合、4人家族で1年間掃除しないと15%程度も低下します。
住宅の面積は36~45坪程度、つまり標準的な広さで、減り方の違いは家族数と喫煙者の有無で決まります。



