新聞記事

2014年07月25日号から

その場で燃費計算できる 営業マンを育成

高性能を燃費保証で見える化2 室蘭・住まいのウチイケ

 
「今後は絶対必要」と社長が即断
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内池秀光社長

 住まいのウチイケでは、14 年前に建てたモデルハウス兼事務所に、付加断熱や木製トリプルサッシを採用。「いろんな面で差別化を図っているが、重要視しているのは断熱と暖房」という性能志向の強いビルダーだ。現在の外壁断熱性能は高性能グラスウール230㎜相当で、窓はエクセルシャノンのトリプルガラス入り樹脂サッシ、そして低炭素住宅が標準仕様だ。「ウチイケさんで家を建てたら、暖房費が半分に減った」とOB 客に感謝されるなど、性能には自信があった。
 ところが、外壁200㎜断熱など高性能をうたう住宅が他社でも建てられるようになり、圧倒的な差をつけるのが難しくなってきた。また、見込み客に「暖かくて暖房費も安い」とアピールしても、北海道では高断熱・高気密住宅は当たり前と思っている客層も多い。「地元ビルダーが『我が社が一番』とアピールし合う中、どう差別化するか悩んでいましたが、わかりやすいのは数字で見える化すること。その時知ったのが栃木・島野工務店さんの燃費保証でした」と内池社長。
 この考え方を知ってすぐに、燃費保証住宅に取り組むことを決め、さっそく地元フリーペーパーに「暖房費負担します」と大きく書いた広告を掲載した。

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今年1月に掲載したフリーペーパーの広告

 
 反響は大きく、手応えを感じた。一方で突っ走る社長の姿に、社員は戸惑った。営業担当の成田智明さんは、「自分たちで燃費計算できるのか」と不安に思ったという。
 内池社長は、「お客さまと打ち合わせの時にその場で燃費計算ができる営業マンなら差別化できる。これからは絶対必要になる。まずは宣言してしまおうと始めました」と苦笑する。ちょうど、新しい燃費計算ソフトを入手し、その使い方をマスターしようかと言っていた矢先だった。成田さんは「最初は2時間かかったが、今は10 分もあれば燃費計算できる」と胸を張る。
 
 
年間の暖房費相当分を前渡し
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暖房費負担サービス第1号の住宅外観

 
 同社では、引き渡し後1年目は燃費計算ソフトで計算した年間の暖房費相当分を引き渡し時に「当社が負担する暖房費です」と、お客さまに渡す。今年2月から試験的に開始し、今後建築する住宅は全て保証する。
 暖房費負担第1号のお客さまとなったのは室蘭市内の佐藤邸。昨年暮れに契約しており、契約後に住まいのウチイケから暖房費負担の話をした。2階建で延床面積は約32 坪。断熱性能は同社の標準仕様で、暖房と換気は、日本スティーベルの熱交換換気に空気熱ヒートポンプを組み合わせ、各部屋の給気ダクトからヒーポンで暖められた新鮮空気が供給される換気暖房システムにグレードアップしている。同社が計算した暖房費は、年間約7万5000 円。
 佐藤さんは「暖房費が高いために暖房を我慢して厚着で過ごすような生活はしたくない」と言い、冬が来るのを楽しみにしている。
 今回の取り組みは、北海道新聞からも取材を受け、「暖房費『1年分負担』」と大きな見出しで全道版に掲載された。反響も大きく、問い合わせがかなりあったという。
 
 
「省エネ行動につながる可能性も」 北大 羽山教授
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佐藤邸で測定機器を置く羽山教授

 北海道大学大学院羽山広文教授は、栃木県の島野工務店が4年前から実施している「1年目は光熱費全額負担、2、3年目は光熱費の試算値から超過しても節約してもその差額を払う」という独自のインセンティブ(報酬)を付与した高断熱・高気密住宅に注目し、それが住まい手の省エネ行動やエネルギー消費の抑制にどう役立っているかを実証研究している。道内の住宅も研究対象に入れることで、栃木県と北海道の消費者の行動の差異も比較する。
 同社もこの研究に協力しており、羽山教授の研究成果を見ながら2年目、3年目の保証についても今後検討する。佐藤邸も測定を開始した。
 
 


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