新聞記事

2014年07月05日号から

全村避難の飯舘村、200mm断熱で復興住宅

 東京電力福島第1原発の事故によって全域が避難指示地域となっている福島県飯舘(いいたて)村は、福島市内に子育て世帯向けの復興村営住宅「飯野(いいの)町団地」を計画、9月入居に向けて工事を進めている。被災者向け住宅の先行事例であるとともに、これまでも断熱住宅を整備してきた飯舘村にとっても初めての200mm断熱の仕様が注目を集めている。

子育て世代の不便解消

 復興村営住宅「飯野(いいの)町団地」は、多くの村民が避難している福島県福島市の飯野町に計画された。飯舘村の全住民およそ5900人は、福島市など近隣市町に分散して避難し、中でも幼稚園児と小・中学生およそ370名は、スクールバスを使っても通園・通学に1時間以上もかかるなど、負担が大きかった。村は昨年まとめた復興計画の中で、これらの不便を解消する子育て拠点として、集会所と戸建て9戸、2戸1棟式14戸、合計23戸の飯野町団地の整備を盛り込んだ。

20140705_1_1.jpg 敷地は約8500㎡。プロポーザルによって採択された案は、中央の集会所とそれを囲むように住戸を配置し、ループ状の団地内道路から車を直接住戸に乗り入れられるよう駐車スペースを配置しながら、道路に走行速度を抑える工夫をした子育て世代に優しい配置計画。
 もうひとつの大きな特徴は、外壁200mmの超高断熱仕様だ。
 飯舘村では1998年の定住促進住宅から、快適で省エネな高断熱・高気密工法を採用してきた。今回はその延長線上にある。村は、年平均気温が10℃、冬の最低気温はマイナス10℃以下と北海道並みに寒く、旧省エネ地域区分ではⅡ地域。一方、建設地はそこまでの寒さではない3地域だが、やはり寒い。村の考え方として、快適で省エネな住環境を提供したいという思いと同時に、村外に整備する住宅なので、将来的にどこかに譲渡することになったときにも価値のある建築を造りたいという思いが重なった。

施工者研修会も開く

 主な断熱仕様は、外壁と屋根が高性能グラスウール16K200mm、基礎が外部押出スチレンフォームB3種100mm、土間下同30mm。開口部は樹脂サッシLow-Eペア、断熱ブラインドつきなど。熱損失係数は1.2W程度となる。
 設計・監理は(株)邑建築事務所(福島県いわき市)、施工は(株)英工務店(福島県飯舘村)で、気密工事を経験している大工が少なかったため、邑建築事務所が加盟するNPO新住協が主催して施工者向けの研修会を開くなど、支援も得られた。現在、大工工事が終盤を迎え、外構が始まっている。被災者向け住宅としては他地域に先行しており、超高断熱仕様という技術面からも注目が集まっている。
 設計・監理する邑建築事務所陽田秀夫所長は「これまでもずっと高断熱・高気密でやってきた飯舘村にとって、今回の提案はさらに省エネを目指すための自然な流れだった。人手不足の中、現場指導はたいへんだったが、『何のために気密シートを張るのか』を理解してもらってからでないと工事はうまく進まない。研修会などがとても効果的だった」と振り返る。
 また、村建設管理係高橋係長は「飯野町団地ができると、車利用で幼稚園の通園が5分、中学は3分、小学校でも20分となり、負担が大幅に軽減される。快適で省エネな住宅で子育て環境も改善されるはず」と語る。同村は今後、村内でも木造2階建て程度の村営住宅を計画している。
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