新聞記事

2014年05月15日号から

岩手・すまい環境プランニング 日本中に気密化技術を伝えたい

20140515_1_1.jpg 日本全国を対象に、断熱・気密のノウハウを伝える活動を続ける男たちがいる。岩手県滝沢市の「すまい環境プランニング」古川繁宏代表とアドバイザーの昆寛氏だ。
 外張り断熱工法や充てん断熱工法など、いろいろな断熱工法に20年以上も前から取り組み、それぞれの特徴やコストをわかった上で、結露発生で悩んだり断熱工法の導入に真剣な会社に対して技術指導し、最終的には会社ごとにオリジナルの断熱・気密施工マニュアルを提供する。
 熱計算で試算した断熱性能や暖房エネルギー消費を達成するためには、断熱・気密施工がしっかり行われている必要がある。北海道ではそのための工法改良が30年ほど前から実を結びはじめ、計算通りの断熱性能が実現するようになったが、施工技術の普及には20年ほどの時間を要した。
 本州では北海道と同時期に断熱工法に取り組んだビルダーや設計事務所もあるが、全体としてはこれから工法普及期に入ろうとしている。そういった中で、断熱・気密工法のディテールを伝えられる人材はまだまだ足りない。熱損失計算や暖房負荷計算ができても、それを実現する現場ディテールと職人の手腕が伴わなければ、断熱住宅は完成しない。

ノウハウを施工マニュアルで提供

20140515_1_2.jpg 取材を進めるうちに、古川氏はA4判のぶ厚い資料を抱えて戻って来た。ある会社に提供する予定の「高性能住宅施工マニュアル」だ。矩計やディテール、特に注意すべき点の添え書き、内部結露判定、熱計算など、マニュアルは全部で92ページにも及ぶ。
 ビルダーに対して、まず工程会議の開催を依頼する。工程会議ではマニュアルを説明したうえで、現場で大工さんと話し合いながら、やりにくい部分はマニュアルを書き直し、使いやすいマニュアルに仕上げていく。
 このやり方で最初の断熱・気密住宅を建てると、気密性能はC値でおよそ0.5程度になる。その後2~3棟建てると、説明しなくてもやれるようになる。新しい職人が入るたびにこれを繰り返せば、現場は常にミスなく進む。もちろん、断熱改修も重要な業務の1つだ。
 ここまでやるのは、2人の苦い過去の経験があるからだ。
 住宅会社勤めだったころ、現場が対応しきれずに気密性能が上がらず、夢のマイホームが欠陥で泣いているユーザーを見てきた。しかし、会社の指示がない限り、改修工事をすることができない。そのときの罪悪感が消えない。技術者として間違いない現場を提供したい、という思いをいまの仕事につなげている。
 古川代表は「ブログで無料相談を始めてから、全国から仕事の依頼が来るようになった。ボクたちの仕事は断熱・気密工法を覚えてもらうまで。気密化が難しいと思い込んでいる人が多いが、覚えた会社は何の抵抗もなくやれる場合がほとんど。素晴らしい住環境の家を提供することをクライアントとの共通目標に据え、いっしょにがんばっていきたい」と語っている。
 問い合わせは、メールなどで。
qqmz69c9@herb.ocn.ne.jp 携帯電話090-1498-1336(古川氏)

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現場で大工さんと監督に納めについて説明する古川代表(左)

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マニュアルの一部・土台回りのディテール


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