新聞記事

2013年06月15日号から

編集長の目 土間下断熱は必要か?

土間下の断熱なしで普及開始

 北海道で壁の断熱厚とともに最近関心を集めているのが、基礎まわりの断熱だ。
 基礎断熱工法は北海道で開発され、本州へ広まった。布基礎の外側に断熱し、床下全体を保温空間とすることで地盤の熱容量を生かしつつ、床まわりの気密納めを大幅に簡略化できることが主に在来軸組工法を採用するビルダーから評価されたためだ。床下を収納スペースにすることもできる。
 基礎断熱をする場合、布基礎とともに土間下も断熱するべきか否か。ヨーロッパ・スウェーデンの図面を見ると、土間下に厚い断熱を施していた。カナダ・R-2000マニュアルでは、布基礎から90㎝までの室内側土間下に断熱すると、とても効率的だと書かれていた。昭和60年代のことだった。
 基礎断熱を普及させる際、北海道では、土間下の断熱は必要ないという指導がされた。断熱すれば冬季の暖房負荷を軽減できるが、夏場に地盤の涼しさを室内に取り込むことができなくなること、数年経過すると冬季の熱損失もおちついてくることがその理由だった。また、新工法普及の障害となるコストアップを最小限に抑えるため、土間下断熱をあきらめた面もあったかもしれない。

床下の熱損失とカビのリスク

 それがここへ来て『土間下断熱をしたほうがよい』という話が徐々に強くなっている。
 Q値計算ソフトでシミュレーションすると、基礎まわりの熱損失を減らそうと布基礎部分の断熱をいくら厚手化してもほとんど効かない。次世代基準(Q値1.6W)を超す高断熱化を目指すとき、基礎とは別の断熱方法が必要になっていることが一つ目の背景。
 そもそも基礎断熱は、初年度床下がかびやすい。床下に暖房器を設置しない場合、夏場で床下温度は床上より3~5℃低くなる。ところが土間下全面に断熱すると、カビっぽさがなくなると言われている。床下のカビを防ぐには土間下全面断熱したほうがよいというのが第2の背景。
 そして、最近の熱解析の結果、基礎断熱の場合は土間下の断熱が有効であることがわかってきたことが第3の背景にあるようだ。
 先日室蘭で開かれたNPO新住協の研修会で室蘭工業大学・鎌田紀彦特任教授は、超高断熱住宅Q1.0-X住宅を推進するに当たり、言葉を選びながら土間下断熱をしたほうがよいと述べていた。

納めとコスト増をどう解決するか

 さあ、この問題をどうやって前に進めていくのか。
 コスト面を試算すると、押出スチレンフォームB3種50㎜を20坪の土間に敷き詰めたら40枚。7万円以上の費用増になる。
 工法はどうか。ベタ基礎のように底盤が平たいときは断熱材を敷き込みやすいが、布基礎工法だと最も熱が逃げやすいとされる基礎と土間の取り合いの断熱がいい加減になりやすい。
 断熱性を維持しながら最大限のコスト抑制を実現するために、どのような土間下断熱工法が考えられるのか。そもそも土間下断熱でどの程度の熱ロス抑制が実現するか。夏場の冷熱は使えないのか。これまで日本の断熱住宅をけん引してきた第一人者とともに、ここはぜひ若手研究者のがんばりに期待したい。先人の功績の上に新しい成果を積み上げるのは、後に続く人たちの仕事だと思う。

20130615_03_01.jpg

床下の環境面から考えると、土間下断熱をした方がカビ被害を避けることができる


20130615_03_02.jpg無暖房・矩計
無暖房住宅(スウェーデン)の断熱構成
屋根:U値0.08W
壁 :U値0.10W
土間:U値0.088W
窓 :U値0.85W


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