新聞記事

2013年03月15日号から

記者座談会

2013年3月15日号

130315-1men.jpg 北海道住宅新聞の記者たちは、住宅会社や住設建材メーカー、行政などに取材し、情報を取捨選択して記事にしている。そこは記者の見識や考え方が試されるところだが、記事にできなかったことの中にも、伝えたい情報はある。そこで今回は記者が実際に取材の現場で感じていること、考えていることを知ってもらおうと、「省エネ基準と断熱建材」「消費税増税への対応」「震災復興」の3つのテーマによる匿名の記者座談会を企画。記者たちが記事に書けなかったホンネを語った。


1.省エネ基準と断熱建材
関心は基準そのものよりエネ問題に

20130315_01_01.jpg記者A:1月末に改正された省エネ基準が告示されたが、実際に住宅会社は基準が変わったことに対する意識があるだろうか?
記者B:意識は全然ないと言ってもいいくらいでは。
記者C:断熱性能のハードルは上がっていないという冷めた見方もあるし、外皮の計算もQ値と同じで、おいおい慣れていくと考えている住宅会社もある。
記者A:12月告示・施行の認定低炭素住宅をやりたいという話もない。
記者D:現状では認定低炭素住宅にメリットはないからだろう。住宅ローン減税の控除限度額を増やしたいのであれば、長期優良住宅のほうがやりやすいこともあるし。
記者A:改正省エネ基準は補助金絡みで徐々に浸透していくと思うが、それよりもエネルギー問題のほうが住宅会社にとって重要な関心事。熱源は電気でいいのか、電気でも生焚きはダメなのか、ガスのほうがいいのかと。
記者C:ユーザーは省エネ・省CO2より、経済性を優先して設備を評価する。そうなると、マイコン割引や5時間通電割引がなくなっても、深夜電力を使う電気蓄熱暖房器や電気温水器はまだ有利。電気生焚き設備の良さである"壊れにくい"ことも大きなメリットで、多くの住宅会社が電気蓄熱暖房器や電気温水器から離れない理由もそこにあると思う。
記者D:また、熱交換換気は改正省エネ基準で以前のようにQ値を下げるための手段としては使えなくなり、正しい評価ができるようになったと思う。改正省エネ基準では暖房機の一種として見ることができるようになったため、エネルギー価格が上昇している中、電気を使いモーターを回しても暖房エネルギーを少なくできるかどうか、ヒートポンプと併用しても意味があるかどうかなどが、評価のポイントになりそうだ。
記者B:断熱建材は昨年から性能向上へ向けた動きが目に付く。これは現時点で最も高性能な製品を目標基準とする断熱建材版トップランナー制度の導入や、改正省エネ基準告示・施行の影響と言われているが、雰囲気的には札幌版次世代住宅基準を睨んでのことのように見える。
記者A:これまで主要な断熱建材はほとんど性能値が変わらなかったが、グラスウールは熱伝導率=λ競争が起きてきて、発泡プラスチック系断熱材もB3種の上の製品が出てきた。
記者D:同じくトップランナー制度の対象となる窓も、熱貫流率=U値で1.0Wくらいの製品が出てきている。

[写真]2月下旬に札幌で行われた改正省エネ基準の講習会。住宅会社の関心は高いように見受けられたが...


2.消費税増税への対応
地域との関わり見直し増税後に備えを

記者B:消費税率が5%から8%になるまで、いよいよあと1年となったが、住宅市場の動きはどうか。
記者A:住宅会社が内覧会をやると、どこもけっこうな数のユーザーが来ている。ただ、「いずれ家を建てるなら今だろう」という気持ちはあると思うが、「うちも建ててくれ」というユーザーが頻繁に来る、いわゆる"駆け込み"が発生している状況ではない。
記者C:大工の絶対数が減少している中では、住宅会社もできる棟数が決まってくる。ユーザーが家を建てたいと来ても来年4月まで間に合わないケースも出てくるのではないか。
記者B:ただ、道内着工の春先の出足の悪さは改善するのでは。昨年の春先は地域型住宅ブランド化事業でバタバタしていたが、今年は補助を受けずにどんどん現場を進める住宅会社が増えると思う。着工のピークは8~9月で、12月も増える可能性があるだろう。
記者C:春先の着工物件を持っていなくても、分譲やモデルハウスをやるという考えもある。
記者A:住設建材メーカーは着工のピークがいつになるのか、気にしているようだ。欠品が不安なのかもしれない。
記者C:住宅会社は消費税増税後の対応について、どう考えているのだろうか。
記者B:今は目の前にある仕事でいっぱいいっぱいでは。昨年はリフォームの強化という話も聞いたが、最近は聞かなくなった。
記者A:住宅会社は一見さん相手の商売と言えるので、実は方程式のようにわかりやすい対策はない。経営者は住宅市場が冷え込んでも自社商品がしっかりしていれば大丈夫という考えになりやすいが、今のうちから自社の弱点を補っておく努力をしないと、"ガクッ"となるかも。
記者D:大切なのは地域との関わりを見直していくことでは。地域への奉仕や感謝、ふれあいを増やすことで地場工務店としての信頼を得ることが、まず第一だと思う。

3.震災復興
暮らしと命を守る住まいの実現へ

20130315_01_02.jpg記者D:東日本大震災から2年。改めて震災により失われた多くの人々に深く哀悼の意を表すとともに,被災された方々にお見舞いを申し上げます。
記者A:今回の震災は地震と津波、原発を切り分けて考える必要がある。原発事故がなければ単純に復興の話は進んだと思うが、原発事故=震災という刷り込みが起きて、電力問題、エネルギー問題の話が先行し、東北復興の話になかなかならないのが現状だ。
記者B:2年経っても前が見えないのは、被災者にとって相当つらいだろう。
記者C:その状況の中で岩手県などの沿岸部では人口流出が続いており、県内陸側の都市である盛岡や北上にはかなり家が建っているらしい。両市が営業エリアの住宅会社は多くの仕事があり、心の中は複雑だという。
記者D:道内からも住宅会社や大工などが被災地に入っているが、原発での作業と同じく元請けの下に直接入らないと、上前をはねられるという話も聞いた。
記者A:道内の住宅会社が被災地に進出するのは、経営的には正しいかもしれない。復興で最低でも10年は仕事があり、その後の10年も普通に仕事があるとすれば、住宅会社だけでなく、大工など職人もまだ40代前半なら行ったほうがいい。もっとも、そうなると道内ではさらに住宅関連産業の空洞化が進むことが心配だ。
記者C:本紙が何かできるとしたら、それは災害に強い家の提案だと思う。流行ではなく、家づくりの基本のひとつとしてとらえ、啓もうを続けたい。

[写真]仙台市の海沿いに建つ被災住宅。補修すればまだ住めそうだが、災害危険区域に指定されたため、住民は移転を余儀なくされている(2011年12月撮影)


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