新聞記事

2012年09月15日号から

工務店・設計事務所に聞きました

「コストはこう下げる」(後編)

 8月25日号に引き続き、魅力ある商品をユーザーが納得できる価格で提供するため、利益を確保しつつ価格を引き下げる手段について、実際に工務店や設計事務所が実践している工夫を紹介する。今回は仕入れ編と工程管理・社内体制編。

仕入れ編
ネットショップを賢く利用

 木材や建材・設備の仕入れ価格は、住宅価格に直結するだけに普段から様々な努力や工夫が見られる。
 よく聞くのは、複数の建材店から見積りを取って仕入れる複数社購買。「建材の種類によって4社から仕入れを行っている。それぞれ価格を安くできる"得意分野"があるからだ」(旭川・工務店)というように、建材店ごとにどの建材の価格競争力が高いかを把握して買い分ける工務店もいる。
 また、インターネットの普及によって、ネットショップから建材等を安く仕入れるケースも目に付くようになってきた。
 ネットショップは基本的に店舗を持つ必要がなく、営業や配達の人件費もかからないので、その分、価格も割安なことが多い。代引き手数料無料で、一定金額以上の購入なら送料もかからず、購入代金をポイントで還元してくれるショップもある。また、「当社が利用しているネットショップでは、金物に付属する釘やビスを省いたり、本数を減らしたりすることができるので、それら付属品の在庫が社内にある時は必要な分だけ安く買える」(道東・工務店)と、ショップによっては細かいニーズにも対応してくれる。
 手形での支払いができなかったり、アフター面での不安もあるが、価格を重要視するならネットショップの利用は検討に値する。
 このほかでは、「常に使える手ではないが、お客様了解のうえ、建材店で売れ残ったアウトレット品や、メーカーショールームの展示品を安く仕入れる」(旭川・工務店)、「海外の建材は可能であれば商社を通さないで直輸入する。商社を通すと直輸入するより商品価格だけで20%程度高くなり、さらに国内運賃を含めると1.5倍くらいの価格になる。それならばノウハウも必要だが、コンテナで直輸入し、自社で使い切れない数量であれば他社と共同購入という形にすればいい」(オホーツク・工務店)などといった声も聞かれた。

※ネットショップ「匠の一冊」のホームページ
http://www.takumi-probook.jp

金物・工具を中心に取り扱っており、価格以外にも、細かいニーズに対応した販売方法やポイントサービスなどのメリットがある20120915_01_01.jpg


工程管理・社内体制編
工期短縮や手戻り・クレームを削減

 目には見えにくいが、工程管理や社内の業務体制を改善し、工期短縮やプラン・仕様変更に関わる手戻りの解消、クレームの削減などにつなげることでコストダウンを図っている例もある。
 例えば工期短縮や着工前の仕様・単価の決定など。「以前、基礎工事業者を別の業者に変えたところ、基礎工事の工期が大幅に短縮された。協力業者の能力を見極め、そのまま任せるかどうか見直すことも必要と思う。また、施工途中で仕様や間取りの変更がないよう、お客様に全体のスケジュールを示して、その通りに進行するよう誘導することも大切。計画通り工事を進めることで、ムダな経費をなくし、利益を着工前に確定させ、その結果見積額に安全を見込んだマージンを盛り込まなくても済む」と、札幌市のある工務店は言う。
 また、「社員教育という投資によって、受注が獲得できる、クレームを抑えられる、というのがけっこうコストダウンの王道なのではないかと思う。細かなコストダウン努力は当然必要だが、経営規模が小さいとコストダウン額も小さく、表面的に仕入れや人件費を削っても、クレーム対策費がかさんだり、評判を落としてしまえば、結果コストは落ちない。むしろ、しっかりした仕事、行き届いたサービスこそが最高のコストダウンなのではないか。そういう視点も大切なように思う」(十勝・工務店)というように、日常の仕事にどういう心構えで取り組むかも、コストを左右する重要なポイントと言える。


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