新聞記事

2010年11月25日号から

忙しいときに役立つ現場管理の工夫

忙しいときに役立つ現場管理の工夫 その1
 ここ数年、国の補助事業などの関係で夏以降に仕事が集中し、年末にかけて目が回るほどの忙しさにまいっているという住宅会社も多いが、一つのミスが後々大きな問題になることもあるだけに、忙しい時こそ管理が大切。今回は忙しい時ほど役に立つ現場管理の工夫をピックアップした。

気密低下をどう防ぐ
 「忙しくなればなるほど現場に目が届きにくくなり、大工の施工ミスも気付かないことがある」とはある住宅会社社長の言葉。忙しくなると知らず知らずのうちに仕事が雑になっている大工もいると言い、忙しい時ほどしっかり現場を見ることが必要だと強調する。
 特に大工の仕事が雑になってくると、影響が出やすいのが気密性能だという。普段なら相当隙間面積で0・5cm2/m2を軽く切っているが、たまにギリギリ0・5cm2/m2というケースもあり、やはりそういう物件ほど工期が厳しかったそうだ。
 これが北方型住宅ECOプラスや北海道R住宅のように、気密測定で一定の数値をクリアしなければならない物件だったり、契約書の中で気密性能値を保証している物件だったりすると、問題は深刻。万が一、クリアすべき値を0・1cm2/m2でも上回ったら、最悪の場合、壁をはがして気密施工をやり直しなんてことにもなりかねないが、そうならないために、現場管理で気密性能を確保するための工夫を行っている住宅会社もある。

20101125_01_01.jpgボード張る前に測定・確認
 例えば内装下地の石こうボードを張る前の気密測定。ほとんどの住宅会社の場合、気密測定は完成後に1回行うだけだが、性能値を契約で保証していたり、建物形状や納まりが複雑だったりする物件では、念には念を入れて石こうボードを張る前に気密測定を行うケースも見受けられる。
 石こうボードで防湿・気密シートが押さえられていないため、測定値は参考程度となるが、室内を負圧にすることによって隙間からの空気漏れを確認できるし、この段階であれば、気密施工に何らかのミスがあったとしても、まだ手直しできる可能性が高い。
 中には道央・A社のように、すべての物件でボード張り直前の測定を行っている住宅会社もある。ただ、測定業者に依頼するとなると1回あたり数万円の費用がかかることから、A社ではキッチンのレンジフードを最大風量で運転して室内を負圧にしており、大工総出で防湿・気密シートの前に手をかざしながら隙間をチェックしている。
 また、道東・B社では測定で室内が負圧になった時に、発煙筒を焚いて外壁の回りを歩き、煙が室内に入ってくるかどうかで、隙間を確認している。

報奨金出すなど競争促す
 一方、施工途中の気密測定は行わず、気密に対する大工の意識を高めることによって、気密性能を確保するという考え方もある。
 自社大工を3~4組の班に分けて現場を回している道央C社では、相当隙間面積が0・7cm2/m2以下で5千円、0・5以下で1万円、0・3以下で1万5千円というように、気密性能の結果によって各班の大工に報償金を出しているという。金額が多い少ないは別にして、"頑張ったご褒美"がもらえるのはやはり嬉しいもの。各班ごとに競争意識も出てきて、性能・品質の向上につながっているという。
 道央・D社も大工の競争意識を促すことを目的に、大工全員を集めて一人一人担当した物件の測定値を発表。
 同社社長は「気密競争の是非はともかく、他の大工が自分よりいい数値を出したら、次は負けないゾ、と思う気持ちになってもらうことで、安定して高い気密性能を出せるようになれば」と話す。
(その2に続く)

※写真
気密施工が終わり、石こうボードを張る直前の現場。この状態で気密測定を行って施工状態を確認するのも一つの方法

忙しいときに役立つ現場管理の工夫 その2

外注との連携も大切
【その1から続く】また、気密化に関しては設備業者などとの連携も重要なポイントになる。
 特に忙しい時には普段から付き合いのある業者ではなく、たまにしか頼まない業者や初めて頼む業者が現場に入るケースも出てくるが、これらの外注業者が気密層を配管・配線などで貫通させた時に、適切な処置ができるかどうかは大きな問題だ。
 そこで道北・E社は初めて頼む業者はもちろん、付き合いが少ない業者が現場に入る時も、事前の打ち合わせで必ず自社で行っている配管・配線回りの気密施工方法を教えている。
 中には「他社の現場でも気密施工はやっているから大丈夫」という業者もいるが、自社の工法や使用部材、納まりに合うかどうかはわからないからだ。もちろん現場では教えた通りに施工しているかどうかを大工がチェックする。

忙しさを伝えないことも方法
20101125_01_02.jpg なお、忙しいとは言っても、それはあくまで管理する側、住宅会社の事務方の都合。現場の大工には精神的な負担をかけず、いつも通りきちんと仕事をしてもらうことが施工ミスを防ぐうえでは大切だ。
 そこで気密施工が終わるまでは「引き渡しまでの工期がきつい」「やることが多くて忙しい」などということは現場に伝えず、通常通りのペース・人数で工事を進め、造作段階に入ったら応援で社員大工などを投入するといった方法をとっている会社もある。
 また、請負で仕事を出しているのであれば、工期を設定したうえで投入する大工の人員などを棟梁に任せてしまうのも一つの方法で、棟梁に次の現場との兼ね合いも考えて大工手配まで任せる場合もある、という会社も。
 事務方は事務方、現場は現場で判断して動くことによって、それぞれ自分の仕事に集中しやすくなる。


※イラスト
気密施工が終わるまで現場には忙しいことを伝えず、造作段階になったら応援で社員大工を投入する住宅会社もある


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