新聞記事

2010年09月05日号から

神奈川・横浜パッシブハウス

コスト抑え日本らしく

20100905_01_01.jpg 8月21日・22日の2日間、横浜市金沢区で「日本版パッシブハウス」(K's House=きらり1号)施工現場見学会が開催され、110名が参加した。
 パッシブハウスとは、ドイツの研究所が開発し普及を進めている省エネ住宅の基準。その基準はほぼ無暖房を実現する高い断熱・気密性能と熱交換換気に加え、給湯と電灯も含む住宅の全エネルギー消費についても厳しい基準を定めている。
 見学会は、昨年鎌倉パッシブハウスの施工を行った東京都八王子市の(株)建築舎とジャパン・パッシブハウス・プロジェクトというパッシブハウス推進の企業グループが主催し、坂本雄三・東京大学大学院工学系研究科教授が応援する形で開催された。
 21日15時からは『低炭素社会の実現に向けた「日本版パッシブハウス」への挑戦』と題した記者会見が同プロジェクトの総合プロデューサー、(有)イーアイ代表堀内正純氏の司会で行われた。
 最初に主催者を代表して建築舎・齋藤敏晴社長があいさつ。「日本版パッシブハウスとは、国産材料、日本で入手できる海外の優れた資材を活用した建物で、従来のパッシブハウスと比較して25%コストダウンを実現した」と概要を説明。
 つづいて、東京大学坂本教授が『低炭素社会の実現に向けた「日本版パッシブハウス」への挑戦』と題して講演。坂本教授は、省エネは外皮+設備+創エネの総力戦になるとし、日本が目標とする低炭素社会を実現するために求められる性能として、1.省エネルギー性能はドイツ・パッシブハウス基準を目標 2.日本に馴染む設計(気候風土、住まい方、建材) 3.日本の特長を活かす選択(優れた家電・設備、建材)―の3点をあげた。

20100905_01_02.jpg断熱性能はQ=0.7W
 続いてイーアイ代表堀内氏から、「日本版パッシブハウスへの挑戦」と題して今回の建物が紹介された。
 性能値は、壁:U値(熱貫流率)0・15W/m2K以下(高性能グラスウール16K140㎜+フェノールフォーム板50mm)、屋根:U値0・1W/m2K以下(ロックウールブローイング400mm)、窓:U値0・8W/m2K・熱取得50%、換気:熱交換率90%以上(インヴェンター)。
 調湿気密シート(インテロ)、透湿防水シート(ソリテックス)。
 断熱性能は、Q値でおよそ0・7W/m2K。全1次エネルギー消費量試算は112kWh/m2・年で、120kWhのパッシブハウス基準値をクリアしている。
 最後にパッシブハウスのオーナーから住宅に対する想いなどが語られた。今回の物件のオーナーは、今後もモデルハウスとして公開するつもりだと説明。鎌倉パッシブハウス住人の蓮見太郎氏からは、1年を経過したパッシブハウスでの暮らしについて「冬は暖房をほとんど使わないことはもちろん、夏もエアコンをあまり使わずに快適に暮らしている。子供のアレルギーもよくなった」などの報告があった。
 記者会見が始まるころには、60名近い参加者で室内はオーバーヒート状態。それでも、熱心に坂本教授らの話に耳を傾けていた。
 22日には、ドイツ公認パッシブハウスコンサルタント、クーラー・アンドレアさんのパッシブハウス講座が開かれた。
 20100905_01_03.jpgジャパン・パッシブハウス・プロジェクトは、総合プロデューサー・イーアイ、基本設計・ハウスタイルズ(株)、設計施工・建築舎、コーディネータ・オフィスコンドウという専門家が集まり、パッシブハウスを推進するグループ。今後、第2、第3の「日本版パッシブハウス」(きらり住宅)の受注を目指している。


試読・購読のお申し込みはこちら 価値のある3,150円


関連記事

powered by weblio


内容別

月別

新着記事