Q・・・断熱厚で壁が200㎜以上、熱損失係数(Q値)で1W以下の超高断熱住宅を引き渡し、冬の間は「本当に暖かい(寒くない)」と好評だったのですが、6月中旬に訪ねた際、『上旬まで暖房を入れる日があった』と聞いて驚きました。そんなものでしょうか。
A・・・この話は、最近ときどき耳にします。そして、以前から原因を調べていますが今ひとつわかりません。理由はわかりませんが、『5~6月に意外と寒い』という高断熱住宅が多いことは確かです。
以前はこの時期の話題と言えば、『3月なのにオーバーヒートした』という暑い住宅の話でした。こういう住宅はもちろん5月も当然のようにオーバーヒートします。しかし、朝晩は暖房を使っていたりするのです。ある1日に朝・暖房、お昼前後から冷房、夜は再び暖房という空調をするわけです。
原因は複合的で5つくらい
さて本題です。
考えられる理由は複合的ですが、1.日射遮へいがしっかりしている 2.建物に蓄熱層がある 3.室内に熱源がない 4.断熱性能が高い 5.室温がふだんから低めに設定されている―という要素が考えられます。
1.寒い家はオーバーヒートしない家であることが多いようです。日射の遮へいがしっかりしていたり、完全に真南を向いていて西面には窓が少なかったり。
日射遮へいはいろいろな方法があります。例えば窓が小さいこともその1つです。日射遮へいが効いていれば、太陽光や外気温度に左右されにくいことは確かです。
2.蓄熱量が大きく影響しているのではないかと昨年までは想像したのですが、決定的な理由ではないようです。ただ、基礎断熱などによってコンクリートの蓄熱量があれば、室温がコンクリート温度に引っ張られます。
3.室内に熱源がないということは、実は大きな原因になっているように思います。熱源とは暖房だけでなく、家電製品、つまりテレビも冷蔵庫もパソコンも、すべて熱源になります。内外温度差が小さいこの時期は、300Wクラスの家電が動いているだけで暖房と同等の効果があります。概算では室温を1・5℃程度引き上げるチカラがありますから、テレビがついているかどうかでだいぶ違うでしょう。
4.そもそも断熱性能が高いことが、夏冬問わずに屋外の気温に左右されにくい室内をつくるワケですから、この時期特有のピーカンの晴天で外気温が低いときなどは、日射遮へいがほどよく効いていれば、屋根の照り返しの影響もあまり受けずに室内が低温で推移することになります。
5.室温を高めに設定している人は、ちょっと寒いだけで迷わず暖房onなのに対し、20℃くらいの設定のかたは、肌寒くなる18℃くらいまでガマンしてしまうという面もあるようです。
肌寒い感覚は17~21℃、おおむね18~20℃でしょうから、ふだんの暖房温度が密接にかかわってくるわけです。
お客さまの中には、「欠陥(断熱欠損)じゃないか?」というニュアンスをにおわせる方もいます。
そうではないと説明するのは難しいですよね、きっと。まずは「同じく寒い思いをされている人けっこういるんですよ」というあたりから入るのがいいでしょうか。
対策は「自分だけではない安心感」。すなわち『遠慮せずに暖房しよう』と心を解放して差し上げることかもしれません。