新聞記事

2010年04月25日号から

思いのほか甘くない 道内企業の札幌進出

 道内から札幌の住宅市場へ進出する建築会社が増えているようだ。今年は帯広本社の(株)ロゴスホームが札幌進出を表明しており、今後もまだ続きそうだ。札幌進出の目算と現状を探ってみた。

○手 法
 道内唯一の巨大市場に参入する企業の背景には、地元市場の縮小がある。多くは地元で成功し、棟数も30~50棟規模まで達している。その成功のノウハウを札幌でも展開するというやり方が一般的だ。
 しかし、手法は同じでも商品メニューを変えるケースもある。1つはフランチャイズ商品を扱っていて、札幌には商権がない場合。もう1つは札幌では別のニードを狙う場合。多くはアッパー層を狙う誘惑に駆られるが、実はローコスト市場でうまくいくケースも少なくない。

○見込み通り
 札幌は辛うじてニッチな市場が成立する市場規模がある。反対にボリュームゾーンが広いので、その中で絞り込むこともできる。
 数年前に進出し、昨年ころから医師などの層をつかんだというH社。札幌圏以外でこういう顧客層だけで1年間の仕事が回るということはほとんど考えられないが、札幌ではある程度成立する。
 土地を仕入れながらローコストを武器に札幌で大きく伸ばしている会社もある。土地の仕入れは即決が必要とされ、札幌にトップが常駐するか同等の決裁権を持っている必要がある。

○見込み違い
 商売だから、失敗はある意味つきもの。反省を次に生かす意味で見込み違いの例も見ていきたい。
「甘く見た」・・・他地域から札幌の市場を見ると、けっこう甘く見えるようだ。例えば実行価格のチェックが甘い、宣伝費をかけすぎ、競争が少ないなど。
 しかし、それは表面的なことであって、例えばお客がコンタクトしてくる前に競争が始まっていることに気づかずに建売やモデルを見てもらう機会を失っているケースがある。
「大勝負をしすぎる」・・・退路を断って1からつくりあげるつもりでも、やはり断ち切れない。というより崖っぷちの気持ちでいきなり大勝負に出るより、小さく始めたほうが時流に合っているように見える。
「知名度」・・・知名度不足を大きな問題ととらえすぎるケースもある。札幌ではそもそも消費者は住宅会社など1社も知らないと言っていいくらい。大切なのは「建てよう」と思った瞬間のお客と知りあうことだけだ。

○今後の札幌
 「エンドユーザーとの距離が遠い」という点が札幌とほかの地域を比べたときの大きな特徴だ。そこで、これまでは大量の宣伝や、住宅展示場といったマス宣伝が使われてきた。ところが昨年1年間で大きく変わった印象がある。マス宣伝が効かないし減らしていい。むしろネット上での戦略や地域密着の地道な活動に気持ちが向いている経営者が多い。土地支配力は相変わらずだが、絶対的とまでは言えず、多少ゆるんでいる。


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