新聞記事

2010年03月15日号から

このままでいいのか疑問も・・・

住宅補助金の功罪

 家を建てる人のための補助金だけれど、住宅業界にも向けているように見える補助金制度。集客や受注獲得に使える半面、書類作成や工程管理に一般住宅以上の労力がかかる。また「補助金頼みでは営業力が弱くなる」という不安や、「家がほしい消費者にとって不平等だし、年金や社会保険の負担が増えているのに、1件に200万円も税金が投入されることに後ろめたさを感じる消費者も出てきた」という声も上がっている。補助金投入3年度目を前に、「補助金制度の現状と課題」をまとめた。

功績は大きい

 住宅会社が補助金への注目度を高めていったのは、一昨年に始まった超長期住宅先導的モデル事業(現長期優良住宅先導事業)がきっかけ。
 "200万円"という補助金のインパクトは大きく、受注に結びつくのはもちろん、地方を中心に集客でも効果があったという住宅会社は多い。

が膨大な手間と工程管理
他の仕事ができない

20100315_01_01.jpg しかし、補助金をもらうための書類作成や申請などの手間は相当多く、営業やアフターなど本来やるべき仕事ができないといった声があがるようになってきた。
 国では長期優良住宅の認定申請図書の簡素化を図ることを目的に、法律施行規則の一部改正を実施予定。申請図書の一部に確認申請などの書類を流用できるようにするとともに、2階建て以下の在来木造は壁量計算書などの計算過程を省略可能にする。
 これにより、多少の負担軽減につながると歓迎の声がある一方、もう一歩踏み込んでほしいという声も強い。この2年間北方型住宅ECOに取り組んだ住宅会社は「認定申請に出す図面や計算書などは、ほとんど技術的審査で提出した書類と同じ。いくら認定申請の書類を減らしたとしても、技術的審査の書類を減らさないと意味はない」と言う。
 また、年度内事業の場合、着工・完成時期が左右されることも、住宅会社が頭を悩ますところ。仕事量の平準化ができなかったり、資金繰りに影響が出たりするからだ
 補助金で受注が取れたとしても、それに振り回されてしまう、仕事のある時期とない時期の差が大きいなどの状態はもっとも深い悩みになっている。

営業力低下が心配
補助金頼みに不安の声も

20100315_01_02.jpg 補助金はユーザーにとって大きな魅力で、受注・集客効果もある。しかし、問題は補助金がなくなった後。補助金に頼りすぎてしまい、知らず知らずのうちに自社の商品力・企画力・営業力を落としているのではないかという不安の声が出始めている。
 「補助金がなくなった時に果たしてユーザーは当社を選んでくれるのか。実際に北方型ECOの割当分は決まったと話したら、他社に流れたユーザーもいる」と言う。
 補助金の要件に縛られてしまうと希望通りのプランが実現できないために、補助金を断ったユーザーもいる。

有効な税金の使い方は?
地域水準クリア型も

 住宅業界への支援、住宅取得者への支援が行われるべきである、という点については、家電や自動車と比較しても間違いないところだ。そうすると、もっと使いやすい制度に変えることはできないか、ということになる。
 第1に提案採択型で、全国からの提案を一括して審査する形式を改め、要求水準を場合によっては地域ごとに定めてそのクリアを条件にする方法がある。
 これはエコポイント型だ。ただしエコポイントより高いレベルのクリアを条件とする。
 第2に住宅に対する補助ではなく、家を建てた人への補助とする。これはいわばローン減税型だ。こうすることで審査や申請などのやりとりを軽減することができる。
 もちろんほかにも方法はあるはず。せっかくの補助を「有効に使う方法」を考えるべきではないか。


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