「子どもの頃、家の間取りを描くのが好きでしたが、まさか仕事になるとは」と笑う。専業主婦として家庭に入り、子どもも生まれて幸せな生活の中、地元新聞の女性通信員に応募。そして住宅会社が主催し、消費者が家具を製作したり2×4パネルを使った小屋を建てる「家づくり教室」を取材することになり、出会ったのが後にとかち工房を創業する後藤薫さんだった。
「自分1人でモデルハウスを見に行ったりするのが好きで、家づくりにかかわりたいという気持ちは心のどこかにあったのだと思います」と武藤さん。通信員の仕事が終了後、ある住宅会社にパートとして採用され、モデルハウス受付をしながら次第にインテリアコーディネートなども行うようになった。
とかち工房に縁あって入社し、一からの出発の中で、これまで経験したことのない営業職を志した。「自分が会社に対して何ができるかを考えて決めました。自分が建てたいと思う家だから営業もしやすい」という。
本気で営業に取り組むと、より専門性の高い仕事がしたくなる。そこで武藤さんは宅建資格を働きながら取得した。現在はお客さまとの出会いからプラン打ち合わせ、引き渡し後のアフターまでこなしている。
自分の家を建てるつもりで
武藤さんは、昨年だけで5軒の現場を担当した。忙しい日々の中で、どういったことを心がけているのだろうか。「お客さまの想いや気持ちを十分に聞き出して汲み取ること。『人の話を聞く』という取材経験が生きていると思います。1軒1軒、自分が建てるつもりで取り組んでいます。」
主婦としての経験も大いに役立っている。営業や打ち合わせの相手は主婦ということも多い。ついつい盛り上がって長話になることも。仕事と関係ない世間話のようでいて、重要だという。
「細かな話の中に、プランニングのヒントが見つかることもあります。それに主婦業は家事が繰り返しの仕事になりがち。その中で楽しみを見つけるために自分たちの働く場所であるキッチンのレイアウトなど細かなことにこだわりが出てくるのです。そんな主婦の気持ちに共感し、要望にできるだけ応えることができるのも、専業主婦や子育て、共働きといったいろいろな経験があるからだと思います」と武藤さん。
手描きスケッチにも取り組む
現場は毎週通っている。図面だけではわからない、実際の空間構成などを見ながら、ニッチの位置を考え直したり、細かな部分まで目を光らせる。職場で女性だから働きにくい、と感じたことがないのも幸いしている。
今後は、プレゼンテーションの技術に磨きをかけ、お客さまを感動させるような営業に取り組む。とかち工房では、造作家具に力を入れているが、お客さまの要望を聞いて打ち合わせの席上で後藤社長がペンを走らせてスケッチを描くと、お客さまもたいへん喜ぶという。武藤さんも見よう見まねで描き始め、もっとうまくできるようになりたいと考えている。
(株)とかち工房ホームページ