新聞記事

2009年10月15日号から

遮熱という付加価値/札幌・北一タカハシ建設

現場のジャッジ 第5回

 断熱・気密という言葉は聞き慣れていても、『遮熱』という言葉は親しみがない。ましてや、『NASA(アメリカ航空宇宙局)の技術』という触れ込みで登場した遮熱シートは「マユツバ物だろう」と感じている人もいるはず。
 
遮熱も差別化の1つ
20091015_02_01.jpg (株)北一タカハシ建設(札幌市)の髙橋一彦社長は、寺社建築を豊富に手がけている経験から、本格的な和風住宅を建てる住宅会社として差別化を図ってきた。さらに、蓄積した施工住宅の暖房費データを元に年間の暖房費の目安を施主に提示し、さらに入居後の暖房代から暖房費削減のアドバイスをするなど、一般の人に高性能住宅の上手な住まい方を指南するサービスを提供してきた。
 しかし、「まだまだ差別化を図っていかないと生き残っていけない」と危機感を持ち、遮熱シートを採用したのは今年初めの施工物件から。遮熱シート「リフレクティックス」の総輸入元である(株)佐武(本社・福島県本宮市)の講習を受け、その考え方に共鳴したという。
20091015_02_02.jpg 北海道も夏は天井面からの輻射熱で2階が暑くなる。断熱材が施工されていても、屋根板金の表面は夏場の日中は70℃以上という高温にもなる。その熱が断熱材にも伝わり、断熱材自体が熱を持ってしまう。そこから室内に輻射熱という形で侵入してくる。その輻射熱を反射してブロックするのが遮熱シートだという。
 
(写真上...髙橋一彦社長 写真下...外壁部の構造模型。軸間にウレタンを70ミリ吹き付け、空気層を挟んで遮熱シート、石こうボードとなる)
 
天井と外壁に使用
 「夏に建てた住宅で、天井面に遮熱シートを施工すると、施工現場の2階の暑さがかなり緩和され、快適になった」と髙橋社長は言う。
20091015_02_03.jpg 現在、同社は天井面の施工を標準とし、オプションで外壁にも施工する。また、冬場に施工した現場では、仕事が終わって暖房を切っても、翌朝来た時の温度低下は4℃ほどで済んだという。この現場では、外壁の断熱は発泡ウレタン70ミリ、それに遮熱材を断熱材の室内側に施工した。石こうボードとの間には空気層を作る。熱損失係数を表すQ値は1.3~1.4Wレベルというが、「遮熱効果で暖かさが長続きするのでは」と見ている。遮熱効果は断熱性能としては表すことができず、正確な評価が難しい。ただ、実感として違うことは確かだそうだ。
 
(写真...天井面に遮熱シートを施工中。緑色は、吹き付けたウレタン断熱材)
 
問題は価格ではない
20091015_02_04.jpg 一見すると問題は価格のように見える。材料費として1500円/m2かかり、幅1.2メートル×長さ38メートルの製品を施工するのに1人工ちょっとかかり、住宅の価格に跳ね返ってくる。「生き残っていくには、この価格が高いと言われるようではダメ。自らがデザインする手作りの建具などこだわりの和風デザインに、『断熱+遮熱』という付加価値を盛り込み、ハウスメーカーと同レベルの価格でより満足度の高い家を提供することが大事」と社長は考えている。
 今後もリフレクティックスは標準採用を続ける。来春には、暖房費削減効果のデータも揃う。
 
(写真...同社が得意とする本格和風住宅)
 
☆採用のポイント/遮熱という新しい考え方
★ここがあと一歩/性能を数値で表しにくい


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