道立北方建築総合研究所では、去る14日に札幌コンベンションセンターで平成21年調査研究報告会「北海道の住宅の未来を考える」を開催。換気や音環境、ユニバーサルデザインなど5つの研究について同研究所職員が報告したほか、学識経験者や地場住宅会社、建築家を交えてのシンポジウムも行われた。
午前中に行われた研究報告では、「住宅におけるユニバーサルデザイン」「室内を快適にする高性能換気と夜間換気」「木造住宅の快適な音環境」「北方型住宅の温熱環境の検証」「積雪を考慮した住宅計画」の5つの研究を報告。
午後のシンポジウムでは北海道大学大学院工学研究科准教授の瀬戸口剛氏が司会を務め、はじめに京都大学名誉教授で長期優良住宅先導的モデル事業評価委員長の巽和夫氏が「持続可能型社会をめざすハウジング」をテーマに基調講演を行った。
地域に根ざす担い手が必要
巽氏は持続可能な住宅づくりを進めるにあたって、スケルトン(躯体)だけ賃貸し、インフィル(室内)は居住者が自由に造る賃貸システムの推進や、設備・インフィルのリースシステムの導入、長持ちする住宅が住み継がれやすい維持管理体制・融資・税制の整備などを提唱。さらに地域での取り組みとして「これからの地域の家づくり・まちづくりには、町医者のように地域に根ざす住まいの担い手として、ユーザーやNPOを中心に大工・工務店、設計事務所、建材・設備販売店が相互に連携したネットワークが必要」と語った。
続いて五十嵐淳建築設計主宰の五十嵐淳氏、武部建設(株)社長の武部豊樹氏、北総研環境科学部主任研究員の鈴木大隆氏の3名がパネリストとして提言。
五十嵐氏は未来へ向けた建築として、屋根をガラス張りにした躯体の中に、入れ子として独立した小さな部屋を配置するプランなどを紹介。武部氏は自社で取り組んでいる古民家再生のメリットなどを話すとともに、地域の木造住宅はその担い手である大工をどのように育てていくかが問われていると強調した。
また、鈴木氏はこれからの北海道の住宅は、地球環境問題を踏まえると既存のストックをどうするかが重要で、世帯人数の減少を考慮すれば建物全体の断熱改修だけではなく、例えば居住部分となる1階だけ断熱改修するなどの考え方もあることを示した。
最後に巽氏をコメンテーターに迎えてパネルディスカッションが行われ、活発な議論が交わされた。
(写真上...基調講演を行う巽氏 写真下...活発な議論が交わされたシンポジウムの様子)
新聞記事
2009年09月25日号から
住まいの未来像探る/北総研研究報告会
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