新聞記事

2009年08月25日

震度6強で問題なし/防災科研・NEESWOOD

木造2×6で実大7階建て震動実験

20090825_01_01.jpg 独立行政法人防災科学技術研究所では、去る7月14日、木造建物の研究を行っているアメリカのプロジェクトチーム・NEESWOOD(ニースウッド)との国際共同研究の一環として、より地震に強い耐力壁や金物を採用したツーバイシックス工法による7階建て木造アパートの実大震動実験を兵庫耐震工学研究センターで実施。震度6強レベルの震動を与えたところ、損傷はほとんどなく、木造建物でも中高層化に十分対応できることが確認された。
 
(写真...兵庫耐震工学研究センターのE-ディフェンスで建てられたツーバイシックス工法による7階建て木造共同住宅)
 
木造中高層に朗報
 
 防災科学技術研究所(防災科研)と国際共同研究を行っているNEESWOODは、アメリカ国立科学財団のプロジェクトで、主に木造建物を研究しているチーム。今回の実験は1.大地震時における7階建て木造建物の耐震性能の検証 2.木造建物の中高層化の可能性を検討するための各種データ取得などを目的として実施したもの。実際に7階建て建築物の実大震動実験ができるのは、世界でも兵庫耐震工学研究センターにあるE-ディフェンス(実大三次元震動破壊実験装置)だけであり、実験当日は国内外から約500人が見学に訪れた。
20090825_01_02.jpg 建物は1階部分が鉄骨造、2~7階がツーバイシックス工法による木構造で、幅12.4m×奥行18.4m×高さ20.4m。全23戸の共同住宅で、各階床には生活状態を想定して家具と同じ程度の重さの錘(おもり)を設置しており、建物の総重量は約367tになる。
 木構造部分はツーバイシックススタッドとOSBで構成。耐力壁は日本のCN75相当の長さの釘を使うとともに、1本の釘で2面せん断となるミッドプライウォールを室内壁の一部に採用した。この耐力壁はスタッドの屋外側に構造用面材を釘打ちする通常の壁構成と異なり、スタッドを構造用面材の両側から平使いで重ね合わせるように釘打ちする。構造用面材を2本のスタッドでサンドイッチした形となり、通常の壁パネルより大きな耐力を発揮できるという。
 また、ミッドプライウォールを含む耐力壁にはATS(アンカー・タイダウン・システム)を設置。ATSはホールダウン金物の一種で、1階から7階まで連続したアンカーボルトで緊結することにより、耐力壁の浮き上がりを防止する。
 
(写真...ミッドプライウォールによる室内耐力壁。壁の右側を上下に貫通している金物がATS)
 
構造的な強度実証

20090825_01_03.jpg 実験では1994年1月にアメリカで発生したノースリッジ地震の時にカリフォルニア州カノガパークで記録した地震波の加速度を1.8倍に増幅し、建物を40秒間揺らしたところ、ほとんど損傷は見当たらず、構造の強さが証明された。今回の揺れは震度で言うと、6強に相当するという。
 実験を担当した防災科研・兵庫耐震工学研究センター契約研究員の清水秀丸氏は「ところどころで、石こうボードに亀裂が入ったり、釘が曲がったりした部分はあったが、構造的にはまったく問題なかった」と話す。また、個人的な感想としたうえで「木造であっても中高層建物の建設が可能であることが確認されたと思う。今後、防火や経年変化の問題が解決されれば、日本でも建設を検討すべきではないかと考えている。ただ、上階では家具の固定などが必須条件となりそう」と語っている。
 今後、清水氏を含めてこの実験に参加した日本側の研究者が在来・ツーバイを問わず、木造の中高層建物について研究を進める予定だ。
 
(図...ミッドプライウォールと一般的な耐力壁の構成)


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