新聞記事

2009年07月15日号から

外張断熱で高耐震化/北総研研究報告会

20090715_03_01.jpg 道立北方建築総合研究所では、去る6月8日・9日に旭川市内の同研究所多目的ホールで「平成21年調査研究報告会」を開催。住宅関連では耐震改修や高性能断熱材の特性、基礎断熱の課題への対応、家庭用燃料電池、高性能な熱交換換気などについて研究発表を行った。
20090715_03_02.jpg このうち、耐震改修は生産技術部生産システム科の植松武是科長が次のように報告した。
 「合理的な住宅改修の方法として、耐震性と断熱性を同時に向上させる2つの工法に取り組んだ。1つは室蘭工業大学鎌田研究室とNPO住宅外装テクニカルセンターとの共同研究で開発した工法。外装材の土台・胴差・桁回りを水平に切り取り、柱頭・柱脚に腐朽がないことを確認してから、袋入りの圧縮グラスウールを気流止めとして土台・胴差し回りに入れることで、既存断熱材の効果を高める。
 外壁を切り取った部分は構造用面材を張って釘打ちすることにより仕口を補強。金物を使った場合と同等の補強効果があることを検証によって確認した。
 また、既存外装材がモルタルの住宅であれば、モルタルの上から胴縁材をビスで躯体に留め付け、モルタルを構造用合板同様に耐力として活用。さらに胴縁材の間に断熱材を施工することで断熱性も向上させることができる。
20090715_03_03.jpg もう一つは外張り断熱を行うだけで耐震性を向上させる工法。これは外張りする発泡系断熱材と胴縁材を留める高耐力ビスによって、軸組屋外側にある既存または新たに施工した外壁下地の構造用面材をより強固に留め付け、外壁の耐力を高めるとともに、地震時には外張り断熱材によって構造用面材を留めている釘の頭抜けも押さえようというもの。
 外張り断熱材の厚さが100ミリと厚くても、胴縁材を留め付ける高耐力ビスのピッチが250~300ミリであれば耐震性能が向上することがわかり、これから外張りする断熱材の固さや高耐力ビスの性能などの情報を整備していく」。
 
(写真上...同研究所多目的ホールには、道内外から多くの住宅業界関係者が集まった 中図...既存のモルタル外装を活かした耐震・付加断熱工法 写真下...外張り断熱による耐震実験の様子。外張り断熱材がある壁体では構造用面材の浮きは見られない)

土間下断熱が有効
20090715_03_04.jpg また、基礎断熱の課題への対応に関しては環境科学部居住環境科の立松宏一研究職員と生産技術部技術材料開発科の伊庭千恵美研究職員が報告。
 立松研究職員は竣工初年度の床下空間の高湿化について「シミュレーションによると、冬場の12~3月に竣工する住宅は、地盤の温度が上昇するまで時間がかかることなどが影響し、床下空間の相対湿度は竣工初年度の夏期に100%に達して結露が発生する結果となっている。改善策としては、地盤温度の影響を緩和するため土間下に発泡系断熱材を敷き込んだり、外気の床下への流入を抑えるために土台・基礎天端間の隙間をなくすことが有効」との見解を示したほか、基礎断熱へのグラスウール採用についても、「発泡系断熱材と同様に使用できることが確認できた」としている。
 伊庭研究職員は基礎断熱材の表面仕上げについて「ひび割れや耐久性に関する課題を解決するには、乾式仕上げや外装一体型基礎断熱材の研究開発がポイントになる。当研究所の実験住宅では、基礎断熱材表面にGRC板(ガラス繊維補強セメント板)、鋼板、PCC(ポリマーセメントコンポジット)という3種類の乾式仕上げを行っているが、6冬経過しても劣化はない」と発表した。
 
(図...冬期に竣工した基礎断熱住宅で夏期の床下結露を押さえるには、土間下に断熱材を敷き込むと効果的)


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