新聞記事

2009年05月25日号から

知識不足が招く「共犯」関係

吉村氏 換気の冊子を出版

20090525_03_01.jpg フランス・アルデ社の換気システムを販売する(株)アルデエンジニアリング社長の吉村孝之さんがこのほど、健康と空気の関係、そして換気の大切さを1冊の本にまとめて出版した。
 専門的な内容を避けてエンドユーザーにもわかりやすく書かれており、「換気選びはぜひ住み手が」という吉村さんの思いがにじむ。
 換気や気密材などを通じてこれまで北海道とのつながりも強い同氏に、出版の意図と伝えたいことを聞いた。
 ―換気への関心が低下していると言われるこのタイミングで、何を伝えたかったか
 「換気の仕事を18年間やってきて思うのは、住宅会社もエンドユーザーも換気に関して残念ながらよくわかっていないということです。
 住宅会社はユーザーに換気の必要性や目的をうまく説明できません。それなら、ユーザーにわかりやすい、換気の大切さを伝える資料が必要だと思ったのが始まりです。
 シックハウス対策が深刻だったころ、換気はとても注目されました。しかしその後の機械換気の義務化によって効能より低価格が優先され、さらに現在は省エネが優先されるかのような時代の空気です。確かに家の中からホルムアルデヒドは少なくなりました。しかし"におい"はなくなりませんし、CO2濃度も結露原因となる湿気も、ほかのVOC20090525_03_02.jpgも少なくなったわけではありません」
 「とくに気をつけてもらいたいのは"におい"です。においはわかりやすい空気汚染のサインですが、人は同じにおいをかぎ続けると、そのにおいだけを感じなくなってしまいます。これを『臭覚疲労』といい、自分の家が換気不良でも家族は気がつかないということが起きるわけです。
 この習慣性の現象を、わたしは『臭感(しゅうかん)疲労』と名づけました。臭感疲労は、においというストレス原因から無意識のうちに逃げようとする反応です。ユーザーにこういったにおいやカビといった身近なことから知ってほしかったのです」
 ―一般的には、換気設備は住宅会社が決めるケースが多いはず
 「その通りです。しかし、毎日吸う空気はユーザーが決めるべきです。きれいな空気を吸いたければ、どういうシステムがいいのか、家族の健康と財産を守るには何を選べばよいかを勉強して見つけてほしいのです。
 日本で売られている9割の住宅は断熱・気密・換気・暖房のバランスが崩れています。欠陥住宅とまで言えないこれらの住宅を買った側は知識不足で、それが不十分な家づくりを許す結果となっている。その意味では共犯者のような関係です」
 ―手厳しい話です。ところで結論は我田引水ではありませんか
 「そんなことはありません(笑)。私は第3種ダクトセントラル式がいいと思っていますが、もっと大切なのは、全体予算の1%程度の費用なら、エンドユーザーはきれいな空気を希望するかもしれない。また熱回収という言葉に過度の期待をしているかもしれないということです」
 
(写真上...著者の吉村さん 写真下...著書「無呼吸症の家に住むのは怖い」)


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